グレの歌シェーンベルク2019.4月春祭

2019年4月14日上野の東京文化会館でグレの歌を聞いてきました。

東京春祭最後の演目だったようです。

終わって見れば確かにラストを飾るのにふさわしい曲だった気がしました。

特に音楽の終盤のところはなんだかやけに感動してしまいました。

グレの歌って?

正直なところを言うと、東京春祭っていうものは数年前までは知らなかったし、グレの歌も知りませんでした。

今回聞きに行ったのは、同じく春祭のさまよえるオランダ人を見て良かったこと、その際入り口でももらったパンフレットを見て、ふと行ってみようかなと思ったのがきっかけです。

藤村実穂子さん甲斐英次郎さんが出ているので声が聞きたいと思ったということもあります。

藤村実穂子さんは「ウェルテル」で見て素晴らしかったのでもう一度その声を聞きたかったのと

甲斐栄次郎さんは昨年真珠採りとローエングリンで見ていてこちらも素敵な声だったのを覚えていたし。

というわけで、グレの歌ってどんな曲なんだろうと興味はあったものの、さほどワクワクするわけでもなく行ったわけでした。

でも行ってみて良かったです。

これまで見たどのオペラとも違っていて新しい感動に出会った、そんな気がしました。

そもそもオペラ人口自体は少ないと思うのに、オペラともオラトリオともわからないグレの歌にどれだけの人が来るのかと思ったのですが、

当日の東京文化会館・大ホールはほぼ満席という信じられない状況でした。

確かにチケットも良い席しか余っていなかったのですが。

さてシェーンベルクというと漠然と曲がきれい、というイメージは持っていたのですが、

今回グレの歌を聞いて確かに美しく、そしてとても情熱的でした。

シェーンベルクというと12音階と言う言葉が出てくるのでもしや聞きにくい音楽?と思うのですが

全くそういうことはなくむしろ心地よい音楽で

最後の長く長く続く迫力の音には感動しました。

合唱もです。

最後のあたりの音楽はほんとに良かった、来て良かったと思えた理由の一つはあの最後があったからかもと思うくらいです。

合唱もラストのところはよくあんなに声が続くものだと感心しちゃいまいした。

歌詞の不思議

元はヤコブセンという人の散文というのは前知識としてあったのですが、

実際に字幕を見ていて感じたのは

単純に「詩なんだな」と言う感じでした。

なので字幕だけ見ていても通常のオペラのようにはっきりとしたストーリーが見えてきません(通常のオペラもはっきりしないのはありますが‥)

  • トーヴェが死んだらしい
  • 鳩が悲しそうに伝えている
  • 後半は物々しくなってきた

という漠然としたことはわかったのですが、

詩ごころがないからかもしれませんが、字幕の歌詞の意味は正直なところわかったようなわからないような

という感じ。

ただ、音楽がずっとよかったので字幕の内容はあまり気にならず、というか正直字幕はあまり見ていなかったんですよね。

音楽に集中したいというか、見なくてもいいやと思い‥。

そんな風に思ったグレの歌でした。

 

美しい曲と歌

全体的には不思議なオペラ。

オペラと言っていいのかはわかりませんが、オラトリオっていう感じはしませんでした。

最初の音楽は湖にキラキラと光が差し込むかのようなロマンティックな情景が浮かぶ音楽。

と思っていたらそんなような歌詞が出てきたので、すごく情景が浮かぶ音楽だなあと。

そしてグレの歌はところどころワーグナーのような、タンホイザーを聞いているような感覚にもなりました。

ヴァルデマール役はクリスティアン・フォイクトというテノール。

一番出番が多く、音楽も鳴り響くので大変な役なんだろうなと。

トーヴェ役はエレーナ・パンクラトヴァというソプラノ。

これぞオペラ歌手!という立派な体型からたくましい声が出ていました。

鳩役の藤村実穂子さんはやはりすばらしかったですねー。メゾソプラノなのに高音も美しくバッチリ。

ほんと魅力的な声でした。

農夫役は甲斐栄次郎さん。

そんなに体は大きくないのにすごく凛々しい声がでる人で真摯な雰囲気が伝わってくるんですよね。ローエングリンの伝令役を思い出しました。

道化役はアレクサンドル・クラヴェッツと言う人。演技はないけどこの人はすごく役作りをして入ってました。ワイシャツの前半分が出てしまっていたのも演出だったのかな。

語りで出てきたフランツ・グルントヘーバーと言う人はまたなんとも雰囲気のある人で全体の雰囲気を穏やかに包み込む感じの人。そういう滲み出るものを感じました。

 

 

第二部が数分で終わってしまうのは珍しい構成だし、初めて見るタイプのオペラでした。

三部は大人数の合唱が出てきて迫力満点。迫力というより情熱的といったほうがいいかも。

途切れのない流れるような音楽が情熱的に盛り上がっていき、ジーンと体に感動が来るといえばいいのか。

うまく言えないけどとにかく音楽がよかったです。

大野和士さんの渾身の指揮も伝わってきました。

シェーンベルクっていいなあとすごく感じた公演でした。

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