「連帯の娘」ドニゼッティ・ハイC連発テノールの難役オペラ

オペラ「連帯の娘」は、イタリアのドニゼッティが作曲しました。

ドニゼッティというと、ランメルモールのルチアをまず浮かべる人が多いかもしれませんが、

私の場合、先に見たのが連帯の娘だったこともあり

このオペラの明るく楽しい印象の方が強く

ドニゼッティと言えば明るく楽しいオペラという印象を持っていました。

 

連帯の娘とランメルモールのルチア

 

ドニゼッティのオペラというと、優雅で上品、美しいメロディが浮かぶ人が多いのではないでしょうか。

ドニゼッティは非常にオペラの作品数が多い作曲家ですが、日本では、

の上演が目立つのではないでしょうか。

特にランメルモールのルチアは、主人公ルチアが悲しみのあまりおかしくなってしまう、狂乱の場が見どころで

お涙頂戴的なところが、日本人の感覚に合っているのだろうと思います。

ところが、私の場合は、最初に見たのが、ドニゼッティの愛の妙薬や、連帯の娘だったため、

悲劇より喜劇のイメージの方が強かったんですね。

ドニゼッティは、多くのオペラ作品を作っていると言いましたが、

その作品には、悲劇と、喜劇の両方があり、

ドニゼッティの場合、両方とも有名なのです。

 

そのような、作曲家は、意外と少ないのではないかと思います。

ドニゼッティの中で何が好き?と聞かれたら、連帯の娘、と答えていた時期もありました。

そのため、はじめてランメルモールのルチアを見たときは、ずいぶんメランコリーなオペラだなとちょっと物足りなさすら、感じてしまったくらいです。(ルチアファンには申し訳ないです)

あれ?これもドニゼッティなの?という感じです。

 

オペラコミックとして

 

連帯の娘というオペラは、パリのオペラコミック座というところで初演されています

コミック座は、どちらかというとコミカルなオペラを上演していた場所です。

ドニゼッティはイタリア人ですが、フランスに合わせて、フランス語で、また内容もフランス軍が出てくる内容になっています。

セリフありの形式は、ブッファではなく、フランス風にオペラコミックといった方がいいでしょう。

ドニゼッティはパリに来る前は、ナポリで、活躍していた作曲家でした。

ところが、ドニゼッティが作曲したポリウトというオペラが、殉教者を扱ったストーリーだったため検閲に引っかかって

上演できなくなったのです。

ナポリというところは、検閲が厳しい場所で有名でした。

ヴェルディの仮面舞踏会も、当初はナポリで上演するはずだったのですが、検閲が通らず、ローマでの初演となっています。

仮面舞踏会は、王が暗殺されるという、実際にあった話を元にしていたことが原因です。

何かと物議があったナポリなのですが、ドニゼッティは、ナポリを去ってパリに行ったわけです。

ちなみにナポリから、パリに行ったといえば、ロッシーニもそうでした。

当時パリは、グランドオペラが栄えていたころですし、オペラが盛んな地域だったということでしょう。

テノールのハイC

 

さて、オペラ連帯の娘の特徴といえば、難解なテノールの役があるということではないでしょうか。

テノールの高音「ハイC」と呼ばれる音は、なかなかスコーンと出すのが難しいので、

出てきても、1箇所とかその程度が普通だと思います。

ところがこのオペラに出てくる主人公の恋人、トニオ役には、ハイCがなんと9回も出てくるのです。

これでもかというくらい何度も何度もでてきます。

聞いていてハラハラするほどです。

当時ドニゼッティは、なぜこんなにハイCが出てくるような曲にしたのかはわかりませんが、歌えるであろう歌手は、想像していたのではないかと思うのです。

実際に1840年の初演でトニオを歌ったのは、29歳のメシーン・マリ・デ・リルというテノールでしたが、

どんな風に歌ったのかは興味あるところです。

不思議なのは、その後彼は、バリトンへの移行を考えていたらしいということです。

バリトンになれそうな人がハイC連発の曲を歌えたのだろうかと。

音域の広い人だったのかもしれませんね。

バリトンと言えば、プラシド・ドミンゴという世界的テノール歌手がいますが、

彼は確かバリトンからはじまった人です。ドミンゴのような声質だったのか、ななどと想像してしまいます。

いずれにしても、日本ではなかなか上演されない理由の一つは、この難しいハイCの問題があるのかもしれません。

 

あらすじと上演時間

 

あらすじ

舞台はスイスのチロル地方。

主人公のマリーは小さい頃、戦場でフランス軍の第21連帯軍曹のシュピルスに拾われ、21連帯で育てられてきた女性。

シュピルスは父親のような存在。

マリーは地元の若者トニオに危ないところを助けられて以来恋仲になっています。

そこに現れるのが旅行中の公爵夫人。実は彼女は、マリーの本当の母親

マリーは公爵夫人の元で暮らすことになり、婚姻を勧められるが、トニオのことが忘れられません。

結局、公爵夫人が折れて、トニオと結婚することになるというハッピーエンドなあらすじです。

 

上演時間と初演

<初演>

  • 作曲:ドニゼッティ
  • 初演:1840年
  • 場所:オペラコミック座(パリ)

 

<上演時間>

  • 序曲:約10分
  • 第一幕:約60分
  • 第二幕:約40分

時間も長くなく、あっという間に終わる楽しいあらすじです。

 

見どころ

 

ハイCがなんども出てくるトニオのアリアは、

「ああ、友よなんと楽しい日」というところですが、

このオペラで最も見どころなのは、何と言っても主人公のマリーでしょう。

軍隊で育ったマリーは、明るく活発で

みんなに愛されるキャラクターです。

公爵夫人の元に行ってからも、お行儀の良い生活になかなか馴染めず、

ヤキモキする公爵夫人

マリーが、懐かしい連帯の歌を歌い出すシーンで、

おもわず公爵夫人もつられて参加してしまうところなどは、なんとも楽しく、微笑ましい見どころです。

マリーのキャラクターが愛らしく、周りの人たちも、悪い人が登場しないのがこのオペラ。

純粋なトニオはもちろんのこと、父親のようなシュルピスといい、公爵夫人といい、みんな結局は良い人ばかり。

このマリーという役は、おそらく誰が演じても最高にチャーミングに見えてしまう役柄なのではないかと思ってしまいます。

 

サザーランドとパバロッティ

最初にこのオペラを見たときの配役は

  • マリーがジョーン・サザーランド
  • トニオがパバロッティ

という組み合わせでした。

サザーランドという人は、オーストラリア出身のソプラノ歌手

メゾソプラノから始まっているだけあって、音域が広く、ドラマティックな役をこなす一方、コロラトゥーラの超絶技巧まで得意とする、世界的な歌手なのですが、

身長が高く180センチもあります。

そのため、連帯の服を着てもとにかくたくましいというか、お世辞にもかわいいとは言い難いような見た目なのです。

ところが、そんなサザーランドがかわいらしく見えてしまうのですから、音楽の力は本当にすごい!

また、パバロッティは、ハイCを得意としていただけあってさすがの声です。

当時パバロッティは30代前半だったと思います。

やはり若いときでないとこの役は無理でしょうね。

最近だと、トニオ役は、ファン・ディエゴ・フローレスの録音がありますが、

なるほどね、と思った配役でした。彼のスコーンと抜ける高音なら、この難役もこなせちゃうだろうなと思いました。

繰り返し何度も見たいオペラの一つですね。

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