サロメ・オペラ見どころ・首を欲しがる娘

サロメは、ヨカナーンの首を欲しがるという衝撃的なストーリーです。

この不思議な王女サロメの心は理解し難いものがありますが、それだけに作曲家や画家の創作意欲が湧くストーリーなのかもしれません。

内容が過激すぎるという理由で上演禁止になったことがあるオペラはあまりありませんが、

このサロメもその一つです。

聖書のサロメ

サロメというのはもともと新約聖書の中に出てくる女性です。

サロメは舞を踊った褒美としてヨハネの首を所望します。

オペラではその理由は「接吻したいから」という

サロメ自身のゆがんだ愛の方に焦点が当てられていますが、

もともとの聖書の話は、母のヘロディアスにとってヨハネが疎ましい存在だったので、母の勧めで所望したとなっています。

オペラ・サロメは、オスカー・ワイルドという人の戯曲が元なっていて、オペラのセリフはほぼワイルドの戯曲の通りに内容もセリフも進んでいきます。

原作のままと言っていいほどそのままで、これほど原作のままのオペラも珍しいのではないかと思います。

いずにしてもショッキングな内容ですが、

ストーリーも音楽も引き込まれるので、見逃せないオペラの一つだと私は思います。

サロメという題材は、劇やミュージカルのほか映画にもなっていますが、世界中のオペラハウスで上演されているという点では、

リヒャルト・シュトラウスのオペラ「サロメ」がもっとも有名かもしれません。

実はサロメを扱ったオペラは他にもあります。

マスネが作曲した「エロディアード」というオペラなのですが内容はかなり異なり、エロディアードと言うのはサロメの母親の名前です。

絵画のサロメ

サロメは絵画にもなっています。

フランツ・フォン・シュトゥックという人が描いたサロメは、

上半身裸のサロメが官能的に踊る様子

右側にはヨハネの首が見えています。

このシュトゥックという人は、ちょっと気味が悪いけどかなりインパクトのある絵を書く人で、サロメのイメージをよく表した絵だと思います。

また、ギュスターヴ・モローというフランスの画家は、主に聖書やギリシャ神話を描いた人ですた、

彼が描いたサロメも妖艶な中に、王女の気品がある絵ではないかと思います。

初演とドレスデン宮廷歌劇場

初演

  • 作曲:リヒャルト・シュトラウス
  • 初演:1905年
  • 場所:ドレスデン宮廷歌劇場

作曲したリヒャルト・シュトラウスは1864年生まれなので、

シュトラウスが41歳の時の初演になります。

彼のオペラ作品としては比較的初期の作品で、

彼のもっとも有名なオペラ「ばらの騎士」はサロメから6年後、同じくドレスデン宮廷歌劇場での初演なのですが、

この二つのオペラは嘘みたいに異なるオペラで、ばらの騎士の方は聴きやすくうっとりするような内容です。

それでも、どちらも魅力的なところがリヒャルト・シュトラウスなんだなという気がします。

ドレスデン宮廷歌劇場

初演のドレスデン宮廷歌劇場(現ゼンパー・オーパー)は、旧東ドイツのドレスデンにあるオペラハウスです。

オペラ好きなら一度は訪れてみたいオペラハウスの一つではないでしょうか。

というのも、ゼンパーオーパーはドイツが威信をかけて保持してきたオペラハウスで、

重厚な外見も去ることながら、数々のドイツオペラが初演・上演されてきた場所なのです。

前身の建物である宮廷歌劇場ではウェーバーが、魔弾の射手

や同じくウェーバーの「オイリアンテ」のほか

グルック、モーツァルト、ベートーヴェンなどドイツ人によるオペラを積極的に上演した場所なのです。

そしてその後もワーグナーのオペラ

が初演されているんですね。

これはこの時期ワーグナーが音楽監督につくなど、ドレスデン宮廷歌劇場に多大な影響力があった時期だったからです。

ただこのあとワーグナーはドレスデンを去るので、ローエングリン以降のワーグナーのオペラは

ワイマール歌劇場→ミュンヘン歌劇場→バイロイト歌劇場

へと移っていくことになるのですが‥。

そしてしばらく静かだったドレスデン歌劇場において、リヒャルト・シュトラウスが

を初演したことでまたまた輝かしい時代が訪れることになったわけです。

リヒャルト・シュトラウスは、ワーグナーの影響を強く受けていますし、

またワーグナーはウェーバーの影響を受けています。

力強い作曲家たちにより、ドイツとしての音楽の精神が受け継がれて行っているのが

ドレスデン歌劇場ではないかと思うのです。

ワーグナーのオペラ

衝撃の映像

リヒャルト・シュトラウスという作曲家は、とても好きなオペラ作曲家の一人なのですが、

実は初めて聞いた時は正直言って苦手でした。

その点においてはワーグナーと同様です。

最初に見たのがリヒャルト・シュトラウスの「エレクトラ」という暗いオペラだったので、余計にそう感じたのかもしれません。

聴きづらい音楽で耳にうるさいとしか感じられず、

主役のエレクトラが声を張り上げて歌い続ける様子はがなっているようにしか聞こえませんでした。

ところが今では大好きな作曲家なので不思議なものです。

当時嫌だと感じたのは、リヒャルト・シュトラウスの多調と不協和音によるものだったと思うのですが、

それが心地よく感じるようになるのですから人は変わるものです(笑)。

さて、そんなサロメを最初に見たのがマリア・ユーイング主演の映像でした。

有名な7つのベールの踊りで艶かしい妖艶な踊りを見せながらドレスを一枚ずつ脱いでいくのですが、

なんと最後に全て取り去って、全裸になってしまったのです。

すぐに、照明がサッと暗くなったので、見えたのは一瞬だったのですが、

え?!という驚きと衝撃。

オペラ歌手って裸になっちゃうの?嘘でしょ、という正直な感想でした。

いまだかつてオペラ歌手がそこまでやるのを見たことがなかったので(ムツェンスク群のマクベス夫人は別だけど‥)。

マリア・ユーイングの舞台にかける意気込みだったんでしょうね。すごいです。

上演時間とあらすじ

一幕もののオペラです。

休憩なしで、一気に見せるオペラで時間は1時間40分程度です。

聖書の話なので、時は1世紀頃のエルサレムの話です。

<簡単あらすじ>

ヘロデ王と妻のヘロディアスは、不倫の末ヘロディアスの元夫を殺して一緒になっています。

しかも殺した夫は、ヘロデの兄でもありました。

サロメはヘロディアスの連れ子で、ヘロデの姪でもあったわけです。

ヘロデは自分の娘サロメにまで、いやらしい目で迫るのでサロメは宴を抜け出します。

サロメは井戸にとらわれている預言者ヨカナーンに興味を示し迫るのですが、ヨカナーンは全くなびきません。

そこにヘロデがやってきてサロメに踊りを強要し、踊れば好きなものをなんでも取らせるというので、

有名な7つのベールの踊りを踊るサロメ。

そしてサロメは、褒美にヨカナーンの首を所望します。

プレートに乗せられたヨカナーンの唇に恍惚のキスをするサロメ、

それをみたヘロデはおののき、サロメを殺せと命じます。

見どころ

もっとも有名なのは、サロメが踊る7つのベールの踊りのシーンです。

ただこのシーンはサロメの踊りのみなので、意外にインパクトが薄くなる場合もあるような気がします。

出だしの音楽のところこそインパクトがありますが途中は比較的静かな曲です。

そもそもオペラ歌手は踊りがそんなに得意ではないのに、かなり長いんですよね。

そんなわけで、7つのベールのシーンについてはどんな演出にするのかが興味あるところで見どころす。

どんな衣装で、どんな踊りを見せてくれるのか。

オペレッタ歌手なら踊りも得意かもしれないけど、

この役は軽い声質の人よりある程度ドラマティックな声の方がいいと思いますし、そこは難しいところかと思います。

はっきり言ってこのオペラに出てくる登場人物はみんなかなり変で、

ヘロデは特に気持ち悪い役、

今でいうセクハラおじさんの典型でしょうか。

どんなヘロデかは見どころですね。

また母親のヘロディアスも怖い人。

でもこれは演じる歌手とその表情によるかもしれませんからそれも見どころ。

そして一番変なのは、やはりサロメ。

若くて美しくて、体を張った踊りで歌い続けるところが多いのでかなり大変な役かと。

やはりサロメがどんな歌と演技を見せてくれるのかが、もっとも見どころでしょう。

もしリヒャルト・シュトラウスを初めて聞くという場合は、

決して聞きやすいオペラではないとちょっと覚悟して見た方がいいかもしれません。

また1幕だけでも時間は長めなのでそれも覚悟ですね。

とはいえあちこちにとても美しい旋律も出てきます。それがたまらなくいいので感じられると嬉しいかも‥。

たまにはこういう官能の世界のオペラもいいんじゃないかと思います。

父王のヘロデは気持ち悪い役なのですが、さすがのヘロデも異常なサロメの行動には耐えられず、

最後にサロメを殺せといいます。

普通なら殺しを命じるなんてとなるところですが、サロメに限ってはそうだよねと思ってしまう異常さ、

最後にヘロデがまともに見えるから不思議です。

いずれにしても、サロメのような女性が本当にいたらかなり怖いですね。

ハンブルクにかつてあったドイツオペラ

もよければどーぞ。

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