ワルキューレ(新国立劇場)2021年3月公演ジークムント役は2人

新型コロナで出演者の交代

  • ワルキューレ(ニーベルングの指輪第1日)
  • 場所:新国立劇場オペラパレス
  • 新国立劇場主催
  • 2021年3月17日

久しぶりにワルキューレを見てきました。

まず始まって「あれ、日本人なの?」と思いました。

休憩時間に新型コロナの影響で出演者が変更になっていたのを知ったのでしたが

1月のトスカの時は海外の人が出ていたので、今回も大丈夫なのかなと勝手に思っていたのですよね。そうはいかなかったということかあ(いろいろ裏では対応が大変なんでしょう‥)

会場は緊急事態宣言中ということで、喫茶もなく閑散とした雰囲気(これにも慣れてきましたけど)。ただ「飲み物も必要最低限に」と言われるのはちょっと困惑というか。

そもそも自分に必要な最低限の水分量なんてわからないし、飲まなくてもなんとかなる気がするけどそれでは体によくないしなあ‥と。

でも会場のスタッフさんたちがなんとなくピリピリしていてこわいし(笑)。

寒い外でおにぎりを食べている人がたくさんいましたね。

早く前みたいに楽しい会場にならないかなあとつくづく思ったのでした。

さてそれはさておき確か前回ワルキューレを生の舞台で見たのはもう10年以上前です。

その時の場所はNHKホール。今はNHKホールは使わなくなりましたけどかつては大きな公演はNHKホールが多かった気がします。

ジークムントがドミンゴでブリュンヒルデがデボラ・ポラスキだったかな、ルネ・パーペもいたかも。とにかくすごい歌手が来ていた気がしますね。

今回のワルキューレはヴォータンをのぞいて全員日本人。

中でもジークムントは1幕と2幕で別の人が歌うというとっても珍しい公演になりました。

ヘルデンテノールと呼ばれる人たちの体格って確かにすごく大きい人が多いんですよね。華奢な日本人には難しいのねと改めて思ったのでした。

でもハラハラして聞くより分けて歌うってこういう状況なんだからありですよね。

対して女性の方についてはそういう不安感を全く感じない歌手の人たちで、日本女性はワーグナーが歌える人が増えてきている気がします。

先日もタンホイザーで田崎尚美さんのエリーザベトがすごく良かったし。日本女性の躍進がすごい!

演出について

今回のワルキューレの演出はゲッツ・フリードリヒ

演出まではよく知らない私でもよく聞く名前です。特にワーグナーでは。

バイロイトの演出もやっていた人ですよね。演出もこうやってなんども受け継がれていくんですよね、オペラって。

そうそうワーグナーというとハリー・クプファーもよく聞きますよね。

今回の演出はすごく大胆な舞台で「斜面」が多い印象。

以前見たジークフリートもやっぱり斜面があったからあれもゲッツ・フリードリヒだったんだろうかなどと考えながら見てました。

全体に暗い色調で飾り気は全くないのですが、男性的でかっこいい舞台だなと。

また、かなり勾配があると思うんですけどあそこに立って歌うってやりにくくないのかなともちょっと思いましたが、そこはいろんな状況で歌うのがプロですもんね。

大きな斜面が丸ごと動くのはなかなかの迫力がありました。

歌手について

今回第1幕でジークムントを歌ったのは村上敏明さん。ワーグナーというよりイタリアオペラっていう声かなと。以前リゴレットのマントヴァ公爵で拝見して以来。

あの時どう見ても女たらしの公爵には見えないけど、声がとても艶っぽい人だなと思ったのを覚えてます。

ただ、悪いけどワーグナーなんて歌って大丈夫なのかなと思ったし、1幕最後の方はちょっと辛そうに見えました。また長いんですよねジークムントの歌が。

1幕は恋愛色が強いですよね、甘い言葉にはぴったりの声だなと思って聞いてました。

そして第2幕でジークムントを歌ったのは秋谷直之さんという方。

この人は初めてだったんですけど、同じテノールでも全く違う声。

どちらかというと地声?胸声?に近いまっすぐな感じの声なんですけど声量があってよく聞こえてきたのと、すごく情熱的で演技がうまいからか伝わってくるものがあるですよね。

なので、2幕のブリュンヒルデとのやりとりが素晴らしかった。

このシーンがすごく好きになっちゃいました。

この方はカルメンのドン・ホセもやられたことがあるみたいですけどいかにもホセが合いそう。最後の刺しちゃうシーンとかね。

ジークリンデ役は小林厚子さんという方。この人の声はとてもきれいでよく響くし遠くまで聞こえてきてました。うーんこういう人もいたのか‥知らなかったと。

そしてヴォータンを歌ったのは唯一海外の人でミヒャエル・クプファー=ラデツキーさん。

結構有名な人みたいですけど、私のイメージのヴォータンより少し線が細い感じかなと思っちゃいました。

見た目はぴったり。

フリッカ役は藤村実穂子さん。この方のフリッカが見られるなんて、それだけでも今回ワルキューレを見に来て良かったなあと。

さすがの声と雰囲気でした。さすがバイロイトに選ばれるだけあるんだなあと。改めて思いました。

ヴォータンとこのフリッカの会話は、ワーグナーの音楽に乗ってるとすごく崇高に聞こえちゃうんですけど要は痴話喧嘩だよねえとどうしてもそんな冷めた気持ちが時々起きてしまうのは私だけ?

「人間の女に双子を産ませるとはこのていたらく」とか

「妻の私をないがしろにして!」とか

フリッカの妻としての執念がすごすぎて、旦那がタジタジになるところはよく考えると普通に夫婦の喧嘩だよねえと。

そしてとても大事な役ブリュンヒルデを歌ったのが池田香織さん。

この方はサムソンとデリラでデリラ役を見て以来です。デリラ役だったくらいなので、メゾっぽい声(私はメゾの声ってすきなんですよねえ)。

この方はとても知的な雰囲気と強い意志が感じられる顔立ちなので、ブリュンヒルデにとても合っているなあ、デリラよりこっちかなと個人的には思いました。

ブリュンヒルデって他のワルキューレとは違ってとりわけ賢くてヴォータンにもかわいがられている特別な存在ですよね。

そんなブリュンヒルデの声にぴったりなんじゃないかなと。大変な役ですけど…。

今回は新型コロナでがらりと出演者が変わってしまったようですが、

日本人の女性すごさを感じたというのが全体の印象でした。

それにしてもワーグナーを上演するってやっぱり大変なことなんですね、改めてそう感じましたね。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です