貞節の勝利・初めて見るスカルラッティのオペラ・美しかった

スカルラッティのオペラをはじめて見てきました!

一言で言うと思ったよりずっとよかった。スカルラッティ好きになりそうです。

スカルラッティのオペラ

スカルラッティと言う名前はオペラの歴史上ではとてもよく出てくるのですが、

日本ではほとんど上演されないんですよね。

なので今回スカルラッティのオペラが上演されるとわかったときは嬉しかったですね。

見たことがないオペラを見るっていうのは私にとっては何より楽しいことなので。

演目はなんでもいいからとにかくスカルラッティを見てみたい、きいてみたい一心で出かけて行きました。

場所はテアトロ・ジーリオ・ショウワ

一度行ってみたいとずっと思っていた劇場です。

こじんまりとしてバロックにはぴったりかも。

ちゃんと馬蹄形になっていて、なんとも見やすいし聴きやすい。声もなぜか鮮明できれいにきこえてくる気がしました。

電気が消えると赤い緞帳がまた美しくて。

新百合ケ丘なのでちょっと都心からは離れていますが、この値段でこの内容はとっても嬉しい限り!

字幕は日本語とイタリア語でした。

 

バロックオペラといえばやっぱりヘンデルが有名ですよね、

スカルラッティはほとんど上演されないっていうことはきっとつまんないんだろうなと正直なところ思っていたんですよね。

やっぱりヘンデルなんだろうと。

ところがそんなことなくて。

ハッとするようなそれは美しいアリアが処処にでてきて、心に染み入るのです。

今回見た貞節の勝利というオペラはブッファの部類ということ、1718年初演なので、

やはりこの頃すでにブッファがちゃんとあったのねと。

ただし低音が活躍するブッファとはちょっと違いますね。

まあなにをもってブッファと言うのかセリアと言うのかって実は微妙なのかも。

貞節の勝利は筋書きこそドン・ジョヴァンニに似ているし、コルネーリアが笑わせてくれるけど、

でもそれがなかったら結構まじめ系オペラだよねと。

ブッファらしい曲もあったけど、私がいいなあと思ったのは美しくて染み入るような曲の方でした。

 

貞節の勝利・演出について

 

今回は3幕のうち2幕を二つにわけて、休憩一回での上演。

時代を少し遡って回想するような設定。

1700年くらいまで遡るのかと思って見ていたら途中で止まりました。

白い布でいっぱいの舞台は庶民的な雰囲気たっぷり。

洗濯物が上がっていって‥あれ下着だなあって、結構ずっと気になりました(笑)

最初に出てきた二人の衣装が、お!コンメディア・デッラルテ風?と。そうでもないかな。

今回演出で一番感じたのは、歌手の人たちが指の先まですごく演技しているなあと思ったことです。

なかなか体全体を使って表現するってできないんじゃないかと思うし、アリアの時は歌に専念してそこまで体の動きに細かく注意しない舞台も多いと思うんですけど

今回の舞台は細かい動きまで実はすごく練習しているのかなって思いました。

やっぱり体の動きがつくと、相乗効果っていうか歌が聴きやすいしわかりやすい、また見ていて楽しいもんです。

にもかかわらず前半の最後の頃はなぜかちょっと眠気がきてしまったのだけど‥。単純に昨日の睡眠不足のせいかも(笑)。

 

貞節の勝利・音楽について

音楽をきいているとやっぱりモーツァルトのコジ・ファン・トゥッテとかフィガロの結婚がちょっと浮かんできました。

というかモーツァルトの方が後だけど‥。

バッハとヘンデルが同じ年に生まれているのは知っていたけど、スカルラッティも同じく1685年だったとは。

今回の貞節の勝利は珍しいオペラだし、おそらく会場のほとんどの人が初めてきいたんじゃないかなと思うんですけど

そういう時にありがちで、拍手のタイミングが最初よくわからなかったですね、

加えて、スカルラッティのオペラってちょいちょい「間」があるんですよね。

しばし音楽が止まる時が。

終わりかなと思うと終わりじゃないっていう。

最初それがうまくつかめなくて、おっとここで拍手?‥じゃなかった‥(笑)

でもだんだん見ている方もその感じに慣れてきて、ここは一旦休止だなとか、また始まるぞ

みたいな雰囲気がわかってくるんですよね。

終盤は拍手も躊躇なく送れたし、後半に行くほど客席と一体感とか盛り上がりがあった気がしました。

オーケストラピットにはチェンバロが2台。これもオペラとしては特徴的ですよね。

ロマン派オペラとは全然違う。

そうそう、レチタティーヴォは主にチェンバロとチェロかな?だったと思いますけど

通常レチタティーヴォって筋を追うために見るっていう感じなんですけど、スカルラッティの場合結構聴きほれちゃうんですよね。

レチタティーヴォもいい感じの音楽なんです、これは初めての感覚でした。

いずれにしてもバロックは管弦楽も少ないから歌が聴きやすいのでなんとなくですが、ハラハラせずに聴くことができます。

最後に全員で歌ったけど基本的に合唱はなし。

歌わないけど登場しているエキストラ的な人が6、7人いて、わさわさ動いていたけど、のちにこういう人たちが合唱として歌うようになっていくんだなと見ていて思いました。

のちのオペラだと舞台にいるのに全く歌わない人っていうのはバレリーナくらいになりますもんね。

そういえば4重唱はきれいでしたねー。4重唱の前の殴ろうとする大げさなポーズもおもしろかった。

 

歌手について

 

今回はすごくまとまった歌手陣だなという感じで、私が知っている人は一人もいなかったんですけどこんなに上手い人がまだまだいたのねという驚き。

すごく聴きやすい声、透明で綺麗な声の人がほとんどで、歌にもとても満足のオペラでした。

リッカルドを歌ったのは迫田美帆さんというソプラノ。

ソプラノのズボン役ってバロックではあるけどケルビーノもバラの騎士のオクタヴィアンもメゾだし、メゾのズボン役を聞くことがどうしても多いので、これもバロックならではかな。

っていうかバロックって全体に登場人物は高い声ですよね。

この人の声もとても透明感と温かい感じがする声で、特に最後に怪我をしたリッカルドがしんみりと歌うアリアはとても心に染み入りました。

レオノーラを歌ったのは米谷朋子さんというメゾソプラノの方。ひたすらリッカルドを思うところはドン・ジョヴァンニならドンナ・エルヴィラっていう役所。

舞台姿がかわいらしい雰囲気の人で、最初ソプラノかなと思ったらメゾでした。

ドラリーチェを歌ったのは伊藤晴さんというソプラノ。この人の声はビンビンとよく響いていましたね。

 

そしておじさん役のフラミーニオを演じたのは小堀佑介さんというテノール。この人の声がまたとてもきれいで鮮明で聴きやすくておじさん役にはもったいない感じがしました。

愛の妙薬なんかビッタリなんだろうなあと勝手に思ってました。

エルミーニオを歌ったのはカウンターテナーラッファエーレ・ペーという人。イタリアのご出身。

ヘンデルもそうですけど、バロックオペラを見にいく楽しみの一つは私の場合、カウンターテナーを聞けるということがあります。

カウンターテナーって椿姫とかフィガロの結婚といった人気演目には出てこないから意外に聞くチャンスが少ないんですよね、でもってやっぱり男性の高音っていうのは女性とは違うものがあるので、魅力的だと思うので。

今回のラッファエーレ・ペーという人も見せ場が結構あり、技術的にも難しそうなアリアが多かったし、とてもよかった。

見た目と声とのアンバランスがなんとも不思議でやっぱりカウンターテナーは聴き入っちゃいますね。

そしておばさんのコルネーリアを演じたのがテノールの山内政幸さんという方。

この人テノールだったんですね。女装するとなんとなくマツコに見えてしまったのは私だけ?笑

この人がいたからブッファだなって。楽しくてよかったです。なんならもっとハッチャケてくれても‥。

ロジーナを歌ったのは但馬由香さんというひと。この人もメゾだったんですね。ソプラノかと思って見てました。

赤い服と舞台姿がとても印象的な人。可愛らしくてお茶目な役が似合いそうな人でした。

そして最後にロディマルテ役はパトリーツィオ・ラ・プラーカという人。バスバリトンだったんですね。

すごく安定した声。まだ若そうなので、将来どんな役をやるようになるんだろう、重い役もやるようになるのかなとかそんなことも考えながら見ちゃいました。

今回はみんな演技が上手いなって思いましたね。

そしてスカルラッティのアリアはよかったです。

もしカストラートがいてこのアリアを歌ったら失神するくらい感動したんだろうか、そうかもしれないと、そんなことを思うアリアもたくさんでした。

ヘンデルの方がたくさん上演されるのはどうしてなんだろう?ちょっとだけヘンデルの方がいい?

今日のを聞く限りどっちがいいとは言えなかったけど‥。

別のスカルラッティも聴いてみたい、そう思った今回の公演でした。

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