この日は昼間こちらのお店に行ってみました。銀座「和蘭豆」(ランズと読むみたいです)という喫茶店のブレンドとフィナンシェ。
フィナンシェが目の前に並んでいて今日は180円と書いてあって、なんかいつもより安いみたいなので、思わず頼んでしまった(笑)。
銀座にはこういう落ち着いたカフェがあって楽しいです!ちなみにコーヒーはサイフォンでした。
初演はラジオ放送
泥棒とオールドミスというのはメノッティが作ったオペラです。
台本も作曲もメノッティ。
初演は1939年なのですが、なんと初演がラジオ放送なんですよね。
NBCっていう放送局でした。
オペラってCDがたくさん売られていますし、ラジオでオペラが流れるっていうこと自体はそんなに珍しいことではないです。
でも普通はCD用に録音したものが流れていたり、実際の上演を録音したものが放送されていたりするのがほとんどだと思うんですよね。
でも泥棒とオールドミスっていうのは、そもそもラジオのために作られたオペラだったというのがとても珍しいです。
舞台での初演は1941年のことなんですよね。
シーンが多くてナレーションが入る
1939年のころはまだテレビが普及していない時代で、ラジオが斬新な媒体だったんだと思うんですよね。
でも今はテレビもあるし、オペラハウスの上演をそのままテレビで流すこともできるので、ラジオで聞く意味がなくなってしまったのではないかと思います。
できるならやっぱり音だけじゃなく映像ありで見たいですしね。
だから今はわざわざラジオでオペラなんかやらないと思うのです。
当時はラジオしかなかったからオペラの初演をやるっていう珍しいパターンもあったのでしょう。とはいえ、ヨーロッパではそういうの聞かないですけど‥。
この「泥棒とオールドミス」というオペラには、ラジオでやった名残があって、それは1幕、2幕、3幕というわけ方じゃなくもともとは14のシーンにわかれているところからもわかります。
あとラジオだとどんなシーンなのかがわかりにくいので、ナレーションがはいるのです。
最初に長めのナレーションが入って、どんな話なのかが大枠でわかるので、その後の流れがわかりやすいし、14のシーンごとに簡単なナレーションもはいります。
そういうナレーションもちゃんとメノッティが考えていて、楽譜に載っていたらしいんですよね(実際には見てませんけど)。
ただし、劇場で上演するときは舞台用にメノッティが手直ししているので、いちいちナレーションは入らなくなっています。
だから舞台版の方を見ると一見普通のオペラに見えるんですよね。
でもメノッティは新しい作曲家なので、初演の録音も残っていて、ラジオ版も聞くことができます。
結構そっちがおもしろいなと私は思いました。
よくテレビなんかでオペラを上演しているのをみると、「次の幕はこんなストーリーです」っていう感じでナレーションがはいることがありますが、
ああいうのと違うのは、「泥棒とオールドミス」の場合はメノッティ自身が書いたナレーションである、と言うところが興味深いわけです。
ちなみに舞台版だと全部のシーンをまとめて、「全1幕」としています。
全1幕で前奏曲もついた
もともとのラジオ放送用は14のシーンだったのですが、それでも全部で約1時間程度なので、短いオペラなんですよね。
ジャンルでいうとオペラブッファになるのかと。喜劇だし。
で、舞台版の方には序曲がついてました。ラジオ版にはなかったんですよね。ラジオ版はナレーターが最初にあらすじを言ってました。
序曲は舞台版用に追加したのかなと思います。
あまりぱっとしない序曲だったけど‥(笑すみません)
1時間程度だけど14のシーンに分かれているっていうと、なんか古い時代のオペラにある
シーンごとにナンバリングされていたオペラみたいですよね。
いわゆるナンバーオペラっていうやつ。
で、昔はつなぎがレチタティーヴォだったけど、その代わりにナレーションがつなぎっていう感じかな。(勝手な解釈です)
それはさておきこの「泥棒とオールドミス」みたいな短めの気楽なオペラを上演するときって、よくピアノ伴奏の上演のことがあるんですよね。
こじんまりした劇場の場合とか、それほどメジャーではないオペラの上演の時とかは、ちょいちょいオーケストラのかわりにピアノになるんですけど、個人的にはやっぱりピアノだとちょっとがっかりしてしまって‥。
「泥棒とオールドミス」についてもピアノで聞くのとオーケストラで聞くのではやっぱり全然違うなあと思っちゃいました。(予算の都合とかあるよね‥)
ところで日本語のタイトルは「泥棒とオールドミス」なんですけど原語の題は
「The Old Maid and the Thief」
なんですよね。Thiefは泥棒。オールドミスはOld Missじゃなくて→Old Maid です。
主人公のミス・トッドは恋人に裏切られてそのまま年をとってしまったので日本語でいえばオールドミスですけど、これって実は日本語英語らしいんですよね。
メイドっていうと日本では女中っていう意味になってますけど、もともとは未婚の女性を表していたようなのです。
未婚の女性は奉公にでてメイドの仕事をする人が多かったからという語源で、これについては日本の昔にもそういう時代がありました。
ミストッドは女中じゃないのになぜメイドなの?
メイドはレティーシャの方じゃないの?と思ったのでこれについてはちょっと納得でした。
泥棒とオールドミスの見どころは
主なアリアは2つで、
- 6シーンでレティーシャが歌う「私を盗んで」
- 8シーンでボブが歌う「夏が来ればまた旅に出たくなる」
です。アリアとしてはこの2つが見どころ聞きどころですね。
あと私が印象的だったのは最初のシーンで度々出てくるフレーズ。
結構耳に残るし、なんとなく楽しい雰囲気で好きなんですよね。
ぜひチェックしてみてもらいたいです。
また、最初のシーンでミス・トッドとミス・ピンカートンの二人が昔の恋の話をする二重唱もなかなか美しいです。
ボブの歌もきれいでメノッティって美しい旋律を書くんだなあと思っちゃいます。
かと思うと劇的な感じの音楽もうまいというか。
このオペラってオペレッタ的な話というか、オールドミスが久しぶりのイケメンに舞い上がるっていう喜劇なんですけど、レティーシャのアリアなんかを聞くと、しっかり重めのアリアなんですよね。
なんていうか、まるでプッチーニのアリアかなんかを聞いているかの様に結構劇的。
メノッティの音楽って古典的な美しいアリアかな、と思うと現代音楽?と思う様なフレーズもあるという、両方がいい感じで混ざってるので、聞きやすいです。
不思議なシーンとか、例えばお酒を盗みにいくシーンとか、そういうのは現代音楽っぽくてすごく情景描写がうまいし、かと思うとまさにイタリアオペラだなあという旋律がでてきたり、
そんなところが私にとっては魅力的で見どころじゃないかと思います。
メノッティの女性を見る目は厳しい
ところで、メノッティが描く女性ってみんな問題ありな女性が多い気がします。
霊媒ではインチキ占いをする女性が罪のない子供を殺してしまうし
アマールと夜の訪問者では息子は善良なのに母親は盗みをするし
電話のルーシーも落ち着きがなくて無神経。
そして「泥棒とオールドミス」の女性たちも若い男性を見たら目の色を変えて盗みまでする
という具合に女性がいつも問題ありなんですよね。
メノッティのパートナーはバーバーという作曲家(男性)だったらしいけど、そんなに女性が嫌いなのか、女性のイメージが悪いのかなあと思ってしまいました。(笑)
いずれにしても初演のラジオ録音が聞けるオペラなんてあまりないので、それがこのオペラの一番いいところかなと思います。
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