新シーズン開幕
新国立劇場のシーズンが始まりました!ヨーロッパと同じく日本も秋からオペラのシーズンが始まります。
最初の演目はヘンデルの「ジュリオ・チェーザレ」。
コロナで中止になっていた演目らしいです。
まず思ったのは新国立劇場のオープニングでバロックオペラをやるんだなあということ。
オーケストラは少ないしバロックは音も大きくないし、だから少し小さめの劇場でやるものなのかなと思ってました。
こう言っちゃなんだけどバロックってやたら長いし、退屈なことが多いし‥笑
人が入るんだろうか‥。
でも会場はほぼ満席!そんなにオペラファンっていたんですねー。
ちなみに今回は午後2時にはじまって終わりが6時半頃。やっぱり4時間半はかかりました。
「ジュリオ・チェーザレ」はヘンデルの中では有名な方のオペラのようですが、なぜこれが特に有名なのかというのは最後まで正直よくわからなかったものの、ヘンデルはやっぱり美しい音楽でした。
このオペラを生で見るのは初めてだったのですが、DVDで見た時よりもおもしろかったです。
映像で見た時はコルネーリアが目立っていたけど今回はそうでもなく、クレオパトラとトロメーオ始め登場人物のキャラがすごく立っていて、そんなところもおもしろかった理由なのかも。
ちょいちょい笑いを誘うのも偶然なのかなんなのかよくわかりませんでしたけど、生真面目より私はよかったです。
そして何より舞台のセットの量が半端なく多くてそれが始終動くので楽しめたました。
エジプトの博物館をコンセプトにしているとか、現代と古代がミックスとか書かれていましたけどそれを知ったのは見た後のこと。
見ていて個人的に感じたのは舞台の裏側を見せてくれているのかなと思っていました。
いつもは裏方さんである大道具さんや小道具さんたちが今回は表に出ていて、舞台が出来上がっていく様子を全部見せてくれている、そんな気がして見てました。
それにしても大量の舞台セット。こんなにたくさんのものが置かれている舞台は初めて見たように思います。
一幕目は石像、二幕目は絵画、そして三幕目はタペストリー。
最初はセットを動かしているのは合唱の人達かと思っていましたがおそらく本職の方なのかなと。
このオペラってほぼ合唱がないですし、だから合唱の人がセットを動かすのかななんてことも思ったりしちゃいました。
それにしても色々舞台のセットっていうのは機能的ですね。
重そうな絵画もさらさらと出てくるし、
巨大な石像はさぞかし張りぼてで中スカスカに作っているのかなと思ったら上に人が乗っていたので、意外に頑丈にできてる、なんてそんなことも思いました。
バロックオペラってアリアが長いんですよね。終わったかなと思うとまた最初から繰り返しがはじまるっていう感じで。
あの繰り返しを無しにするだけでかなり時間の短縮になるんじゃないかといつも思っちゃうんですけど
そんなことしたらヘンデルに申し訳ないのだろうか。(怒られそう…)
でもまあ今回は舞台セットがあれこれよく動くのでそんな退屈さもほとんどなく4時間半も長さを感じなかった気がしました。
歌手の方についてなど
新国立劇場の公演はいつも歌が世界レベルって感じているんですけど今回もやはりそれは感じました。
タイトルのシーザー役は海外からの歌手さんでしたけど、日本人の活躍がすごく目立っていた気がします。
バロックオペラって最初の役の見極めが難しいんですよね。
シーザー役にしても女性がやるのかな男性かな、カウンターテナーかな、バリトンかなとか。
王様がスカートはいて女性が歌っていたりすると誰だろう?って悩むし(笑)。
今回もシーザーが出てきたとき最初女性なのか男性なのか悩みました。ちゃんとパンフレットを見ていなくて…。
ポンペイウスの巨大な首がドン!と出てきたときは驚きましたけどここまで大きいと凄惨さが無くてかえっていいかもですね。
その後も巨大な石像が出てきて圧巻な舞台。実質使っているのはほぼ舞台の前の方の部分で、向こう側には普通の服を着た人たちがいてなんともシュール(笑)。
最初は「何だろこれ?」ってハテナマークが頭に浮かぶんですけど不思議なもので4時間の公演のうちに人間の目と頭は慣れていくんですよね。
2幕で絵画が出てくるとふうん今度はこうなんだ…となんか納得しながら見ている自分がいて。
そうやって演出家の世界に入っているんでしょうね。
2幕の絵画を使っただまし絵のような演出もおもしろかった。
姉と弟が上にのって騎馬戦をやっていましたけど、あれで戦争をあらわしていたんですね、シリアスになりすぎずあれもなるほどって。
あれだけ古い時代のものだとシリアスすぎるのもつまらないし退屈だし、かといって笑いに寄りすぎるのもどうかと思うしっていう微妙なところなのかなと。
なんか時々笑いをとって息抜きしながらッていう感じは、バロックには良いかもって今回思いました。
タイトルのシーザーを歌ったのはマリアンネ・ベアーテ・キーランドさん。ノルウェーのメゾソプラノ。
背が高くて衣装を着けていると一瞬今回は男性のシーザーなのかなと思いました。
終始落ち着いた雰囲気だったので、ベテランなんでしょうね。思慮深いシーザーという感じでした。
今回圧巻だったのはやはりトロメーオの藤木大地さんとクレオパトラ役の森谷真理さんだったのではないかと個人的には思いました。
森谷真理さんのクレオパトラは最初こそ「髪が長くないんだ…」とか「絶世の美女なのに豪華な衣装でもないなあ」とかそんなことを思っていましたが、
弟と対立する激しい気性のキャラがすごく際立っていて、それに加えて圧巻の歌唱力で他のことは何も気にならなくなるほどよかったです。
クレオパトラはドキッとする衣装で一瞬、「え、着てない?」と思いましたが衣装でした(笑)。そんなドキッもオペラには時々欲しいかも。(ペレアスとメリザンドの時も結構ドキッとしたけど…)
あの森谷真理さんの体から発する声の独特の響きと艶はどうやって出ているんだろう、輝く響きとでもいうのか、
最初に見た時からすごいって思っていたけどやっぱり今回も素晴らしかったです。
そしてトロメーオの藤木大地さん。バロックではリナルドで見てその時もよかったけど今回はサイコな悪役がばっちり決まっていました。
喜び方が「もしや地が出てる?」と思う演技でおもしろかった。そしてやっぱり声が素晴らしかったです。
最後死ぬときの声もおもしろかった。
コルネーリアを歌ったのは加納悦子さん、メゾソプラノ。この方ははじめて聞いたんですけど小柄なのに声がよく響いて落ち着いた演技と歌でした。
クレオパトラとは真逆の悲しい美女という雰囲気が対象的で良かったです。
息子のセストを歌ったのは金子美香さん。この方もはじめてだったんですけど、後半
ちょっと上ずってないのかなあなんて感じた時もありましたけど、一生懸命さゆえかなって思う演技でセストの強い思いが伝わってきて良かったです。
ニレーノを歌った村松稔之さん、この方もカウンターテナー。この人も良かったんですよね。
なんかちょっとずるそうなキャラもしっかり見えてきて、歌も演技もよくてなんだか不思議と存在感がありました。
カウンターテナーも層が厚くなっているんですねー。
そしてアキッラをうたったのはヴィタリ・ユシュマノフさん、
クーリオを歌ったのは駒田敏章さん。
今回はとりわけ高い音域の声が多かったので、この二人のバリトン声を聞くと「低い声がいたー!」っていう嬉しさと、なぜか目新しさすら感じてしまいました。
あとヴィタリ・ユシュマノフさんについては今回初めて声だけをきいて日本人の声じゃないっていう感覚的な物を感じました。
そういうのってあるんだろうか…。
歌に関してはそんな感じでした。
そうそう舞台ではきっちり古風な衣装を来た人たちが本当にバイオリンを弾いたりしていましたけどあれはオーケストラの一部の方たちだったのか。そこら辺もちょっと気になっちゃいました。
気になると言えば右側の扉のそばに消火器らしきものがありましたけどあれはなんだったのかなあ(笑)
今回は登場人物の個性がすごく見えていてそれが印象的だったなってそんな風に思いました。
コメントを残す