2018年2月24日(土)芸術劇場にて
ビゼー作曲「真珠とり」を見てきました。
演奏会形式です。
演奏会形式
会場は芸術劇場。
池袋の西口を出てすぐのところにある、コンサート会場です。
いくつかホールがあるのですが、今回は最上階の最も大きいホールです。
演奏会形式のオペラというのは演技はせず、舞台セットも無い普通のコンサートのようなオペラです。
通常のコンサートと同様、オーケストラは壇上にいて、
オーケストラの前に歌手たちが立って歌だけ歌うんですね。
オーケストラの後ろにはその他の村人や、街の人などを歌う、合唱の人たちが大勢立っていて
ちょうど第九の第4楽章のような感じです。
オペラ真珠とり
ビゼーのオペラ真珠とり
真珠とりは、ビゼー作曲のオペラですが
ビゼーというともっとも有名なオペラはカルメンで、カルメンは世界中でもっとも有名なオペラの一つだと思います。
ただ、この真珠採りというオペラはカルメンに比べると全体的におとなしい印象のオペラだと思いました。
実はビゼーという人はカルメンの大成功を知らずに、亡くなっています。
その点では、画家のゴッホと少し似ているような気がします。
オペラを見ない人でもカルメンだけは知っていると思いますし、曲も有名ですよね。
オペラ真珠採りが出来上がった当時は、独創性が強いオペラと言われあまり支持されなかったようです。
現代聞くと全くそのようなこともなく
巫女のレイラが登場するあたりなど、なぜかバロックぽいものさえ感じてしまいました。
さて、真珠採りはストーリーがなかなか複雑で、巫女が出てきて、ベッリーニのノルマのような展開かと思うとそうでもなく、
処刑を命じた相手が実はかつて自分を助けてくれた女性だったところなど
かなりよくできたというと上から目線になっちゃいますが、要するにおもしろいストーリーだと思います。
ただ、オペラを見ている限りでは残念ながらいまひとつその内容が伝わってこなかったのはちょっと残念な気がしました。
台本って難しいんでしょうね。
前半はナイーブな旋律がフランスのオペラ的なものを感じさせますが、第二幕の後半あたりから、雰囲気が変わり、
イタリアヴェルディのオペラのような情熱的なオペラになります。
前半と後半のイメージがかなり変わりますね。
アリアと合唱
オペラ真珠とりの曲は全般にやはりとても美しかったです。
さて、このオペラ真珠とりを見るのははじめてなので、楽しみにしていたのですが、想像通り美しい曲でした。
真珠とりには「耳に残るは君の歌声」という有名なアリアがあります。
オペラを見始めた頃、聴いたことはあるけど曲名はわからなかった旋律が、
実はオペラの一節だったことがわかる、ということがしばしばありました。
この真珠とりのこのアリアももその一つですね。
1幕で、ナディールが歌うこのテノールのアリアはとても有名な旋律でどこかで耳にしている人が多いのではないでしょうか。
今回ナディールを演じたのはジョン・健・ヌッツォさん。
この人のテノールは本当に澄んだ甘い高音です。
見た目は太い声を出しそうに見えるのですが、彼から出てくるのは繊細な美しい声です。
アルフレード・クラウスがちょっとこんな感じだったかなとなんとなく名前が浮かびました。
ナディールのアリアのほか、フルートとハープから始まるナディール(テノールジョン・健・ヌッツォさん)ズルガ(バリトン甲斐栄次郎さん)の二重唱のアリアもとても美しかったです。
2幕のレイラ(ソプラノ鷲尾麻衣さん)のアリアもしっとりと歌い上げてよかったのですが、
2幕の圧巻はやはり合唱でしたね。
1幕の出だしの合唱は、若干のちぐはぐさを感じたのですが、
2幕の合唱は素晴らしかったです。
オペラにおける合唱は、脇役のようでいて、とても良し悪しがでる部分じゃないかと私は思います。
今回の合唱は国立音大の合唱団で、現役の学生さんだと思いますが、2幕後半からの歌は迫力がありました。
この、2幕終盤の合唱のあたりから、オペラの雰囲気がガラッと変わってきた感じがあり、休憩を挟みますが3幕もその流れで物語が移っていきました。
雰囲気を盛り上げる合唱の力は大きかったように思います。
やはりもっとも引き込まれたのは3幕。
ズルガ役、バリトンの甲斐栄次郎さんの演技と歌が素晴らしかったです。
甘く叙情的な声質は魅力的で、真摯な役柄にとても合いそうな声です。
レイラ役のソプラノ鷲尾麻衣さんは高音で若干ずり上げる感じが気になるときもありましたが、
声量もあり、立ち姿も美しく、特に3幕ではコンサート形式であることを忘れさせてくれるほどよかったです。
3幕はまるでヴェルディのオペラを見ているような錯覚になりましたね。
今回、レイラ役の鷲尾麻衣さんがほとんど見ていなかったのに対し
ジョン・健・ヌッツォさん他の方たちは、かなり楽譜を見ていたので
なんとなく対照的に見えました。
そこは演奏会形式なので、その人それぞれのやり方があるのでしょうね。
今回のオペラにはヌーラバットという役柄で妻屋秀和さんも出演されていました。
実はこの方の声を聞きたいということもあり、出かけたオペラだったのですが、
今回のヌーラバットは控えめの役柄。
でも流石に妻屋さんは存在感があり、引き締まっていました。
今回のオペラ真珠とりはかなりマイナーなオペラだと思いますし、演奏会形式だったにも関わらず
芸術劇場はほぼ満席だったのは驚きでした。
オペラバブルなんでしょうかね。
コメントを残す