清教徒/イタリアではなくパリで初演!ベッリーニ最後のオペラ

ベッリーニが亡くなる年の作品

今回はベッリーニの清教徒について。

  • 作曲:ベッリーニ
  • 初演:1835年
  • 場所:イタリア劇場(パリ)
  • 台本:カルロ・ペーポリ

清教徒はノルマと並んでベッリーニの代表作と言っていいんじゃないかと思います。

ただ、それほど上演されないオペラです。特に日本では。

ノルマもそうなのですが清教徒はかなり歌う難易度が高いらしく、特に主役の二人には高音が求められる大変な役。おそらくそんなこともあって上演が少ないのかなと思います。

ベッリーニという人は33歳という若さで亡くなっているのでそもそもドニゼッティとかロッシーニより作品が少なめなのですが、それでもかなりの数が現代まで残っているのはやはり音楽が圧倒的に美しいからじゃないかと思っています。

イタリアらしいオペラと言うと私なら真っ先にベッリーニをあげたいくらい好きな作曲家でもあります。

清教徒の台本はカルロ・ペーポリという人。イタリア生まれの貴族であり詩人。政治運動の末パリに亡命していたようで、イタリア語ができるので台本を書いたのかと。

原作はウォルター・スコットという人の小説で、これを戯曲化した作品がオペラの元になっているようです。

この時代って台本とか歌手とかやっぱり貴族が多いんだなと思います。

まあ当時のオペラはまだまだ貴族向けだから当然なのかも。

特に初演場所であるイタリア劇場っていうのは新興資本家がいたオペラ座より、もともと貴族だった人がよく通っていた場所らしいんですよね。

さてベッリーニもイタリア生まれですが、この作品はパリでの初演なんですよね。イタリア劇場というのはパリにあった劇場なのです。

この時代は有名作曲家が我も我もとパリに行ってます、ロッシーニもドニゼッティも、のちにワーグナーやヴェルディも。そしてベッリーニもその一人でした。

清教徒は当時パリで大成功をおさめたらしいです。でもその同じ年にベッリーニは病で亡くなってしまったんですよね。なので清教徒は最後の作品となったわけです。

初演の1835年と言う年はドニゼッティもこのイタリア劇場でマリン・ファリエーロっていうオペラを上演しているし、

パリオペラ座の方ではまさにグランドオペラ時代に突入!。アレヴィ作曲スクリープ(台本)の「ユダヤの女」が幕開けしている年なんですよね。

そのせいか清教徒はちょっとグランドオペラっぽいっていう気もします。

何がどうとはうまく言えないけどたとえば合唱の効果‥かな。

当時の人気の風潮に合わせたっていうこともあったんではないかと思います。

清教徒カルテット

超難解な清教徒というオペラが当時大成功したのは、初演歌手が良かったっていうのが大きかったようです。

主役の一人エルヴィーラを歌ったのはジュリア・グリージというソプラノ。この人はベッリーニのノルマの初演の時にも実は出ているんですよね。

そんなつながりもあって清教徒でもこの人だったんだろうなと、容易に想像できますよね。

ノルマの時はアダルジーザの方を歌っているからソプラノといってもメゾもできるひとで、要するに音域が広い人だったんだろうなと思います。

ちなみにノルマでタイトルロールを歌ったのはジュディッタ・パスタ。こちらも歴史に残る名ソプラノですよね。

さらにジュリア・グリージの姉はベッリーニのカプレーティとモンテッキでロメオ役をやっているんですよね。

ロメオ役は男役で今はテノールがやったりメゾソプラノがやったりしますけど、初演の時はメゾでそれをジュリア・グリージの姉が歌っているわけです。

この姉妹はやっぱりメゾっぽい声だったんだろうなと、声は聞けないけどなんとなく想像しちゃいますね。

で、このジュリア・グリージをはじめ

相手役のアルトゥーロ(テノール)、恋敵のリッカルド(バリトン)、叔父役のジョルジョ(バス)の4人が当時すばらしかったらしく

「清教徒カルテット」と呼ばれたらしいです。すごいなあ、聞きたかった。

最初カルテットと聞いた時はどの4人?って思ったんですよね。

恋敵のリッカルドが入ってるのはわかるけど、あと一人誰だろうって。

清教徒にはエンリケッタっていうもう一人の女性が出てくるのでそれかな?とか。あまり出てこないけど父親役かな?とか。

でもそうじゃなくてもう一人は叔父のジョルジョ役なのです。そしてなんならこの役無くしては清教徒は成り立たないねというくらい重要で、味のある役柄がジョルジョ。

テノールとソプラノの高音も見どころだけど、主役二人が目立つのはオペラでは比較的よくあること。そんな中、清教徒ではジョルジョとリッカルドという低音二人の二重唱が主役以上に見どころで、すごくいいんですよね。実際初演でもこの場面は拍手が鳴り止まなかったのだとか。

だから「清教徒カルテット」って言われるんだなあと思うとなんか勝手に当時の盛り上がりを想像してゾクゾクしちゃうのでした(笑)

ちなみに清教徒カルテットと呼ばれたのは

  • エルヴィーラ役のジュリア・グリージ(MS−S)
  • アルトゥーロ役のジョバンニ・ルビーニ(T)
  • リッカルド役のタンブリーニ(Br)
  • ジョルジョ役のルイージ・ラブランシュ(B)

という4人でした。

清教徒簡単あらすじとみどころ

では清教徒の簡単あらすじと見どころを書いてみます。

<あらすじ>

エルヴィーラとアルトゥーロは愛し合っているのですが、エルヴィーラは議会派(清教徒)の娘、一方のアルトゥーロは王党派の騎士なので二人の結婚は反対されており、

エルヴィーラの父はリッカルドに娘をやると約束していました。

ところが叔父のジョルジョの説得のおかげでエルヴィーラとアルトゥーロの結婚は認められることになったので、リッカルドはアルトゥーロを恨むことになります。

さて二人の婚礼の日、王党派のアルトゥーロはたまたま居合わせた王妃を救うために結婚の場から王妃を連れていなくなってしまいます。

リッカルドは事情を知りつつ好都合とばかりに二人を見逃して、アルトゥーロは他の女と逃げたと伝えたので、それを聞いたエルヴィーラは発狂してしまいます。

憎しみしかないリッカルドを改心させるのは叔父のジョルジョ。

そしてアルトゥーロが戻ってきてエルヴィーラは一旦正気に戻るのですが、アルトゥーロが処刑されることになってしまい、再び錯乱状態に‥。

その時伝令が着いてアルトゥーロは許されたとわかり、エルヴィーラは再び正気に戻りめでたしめでたしとなるのです。

<見どころ>

出だしのオーケストラの刻むような音楽はちょっと印象的。

清教徒を見ていて全般に感じるのは、アリアが必ずしも一人だけの見せ場になっていないことです。

アリアだけど途中から二重唱になったり、合唱が入ったり、合いの手がはいったりそしてまたアリアに戻ったりとそんな感じです。

つまり完全に独立したアリアっていう感じではないところがちょっと違うかな。

これがパリの人に受けるやり方だったのか、ベッリーニの新しい試みだったのかはわかりませんが、いつもの独立したアリアでないのはおもしろいところだと思います。

この方法で特に印象的なのが第二幕後半のリッカルドとジョルジョの二人のシーンで、一人だったり二人で歌ったりするのですが、これがかなり長くて感動的なシーン。

低い声二人のこの場面が一番見どころじゃないかって思うのは、この時代のオペラはテノールとかソプラノの見せ場が多い中ですごく珍しい気がします。

第一幕2場のジョルジョとエルヴィーラの二重唱のところも見せ場で見どころ。

良い場面に必ずいるのがこのジョルジョという叔父さまなんですよね。

そして第一幕3場のアルトゥーロのアリアは超高温があるので、ハラハラして見ちゃうところなのでこれも見どころ聞きどころ。

ベッリーニやドニゼッティのオペラってアリアの時にバイオリンとかチェロ、フルートなどの楽器が静かに演奏しているケースが多いので、すごく歌が聞きやすいです。アリアが聞きやすいっていいなあと思っちゃいますね。

また第一幕3場のエルヴィーラの「私はかわいい乙女」のアリアはまさにベッリーニだねという難しそう‥なアリア。これも見どころ聞きどころ。

そして第一幕3場の最後のエルヴィーラが発狂するあたりの切ない合唱も個人的にはベッリーニらしくてとても美しく見どころ。

第二幕でエルヴィーラの様子を語るジョルジョのしんみりしたアリアもいかにもベッリーニ。美しくせつなくあたたかい曲なので見どころ聞きどころ。ここも合唱や重唱が入って単なるアリアではないです。

というわけで見どころ聞きどころたっぷりなベッリーニの清教徒は、やはりイタリアらしい艶っぽい声が合うだろうなあって思います。

あとこの時代のいわゆるロマン派オペラは現代解釈とかがしにくいと思うので、

衣装や舞台が古風で豪華だったりします。それも個人的には好きなところかも。

やっぱりベッリーニは美しいですね、これに限るかも。

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