青ひげ(オッフェンバック)のオペレッタ

童話青ひげのパロディ版?

今回はオッフェンバックの青ひげというオペレッタについて書いてみたいと思います。

  • 初演:1866年
  • 作曲:オッフェンバック
  • 台本:メイヤックとアレヴィ
  • 初演場所:ヴァリエテ座(パリ)

青ひげというと私の場合まず浮かぶのはバルトークの青ひげ公の城と言うオペラの方なのですが、それ以外にポール・デュカスという人が作曲した「アリアーヌと青髭」というオペラもあります。(もっとあるかも‥)

これらは皆童話の「青ひげ」のお話が元になっているのですが、バルトークとポール・デュカスの青ひげは、結末は異なるけどかなりシリアスなオペラ。

それに対してオッフェンバックの「青ひげ」は全然違っていてこちらはパロディ版とでもいう感じかと思います。

童話にはいない人物が大勢出てくるし青ひげの存在感が薄いし童話とはかなり別物です。

時代でいうとバルトークとデュカスは20世紀前半なのに対して、オッフェンバックは1866年の初演なのでバルトークが最も古いです。つまり3人の中では最初に青ひげのオペラ(オペレッタ)を作ったわけです。

国も時代も違うけど青ひげっていう童話の題材は昔からオペラに結構使われているんだなとそんなことを感じました。

初演のヴァリエテ座というのは現在もパリに残っている劇場です。ちなみにヴァリエテというのはバラエティのこと。バラエティ劇場っていうことなんですよね。

私は残念ながら行ったことがありませんが、今も見ることができる歴史のある建物っていう意味で貴重だなと思います。いつか行ってみたい場所のひとつですね。

オッフェンバックの「青ひげ」というオペレッタはおそらく日本ではほとんど知られていないんじゃないかと思います。

オッフェンバックといえば天国と地獄、またはホフマン物語が有名なので「青ひげ」はおもしろくないのかなと思ったのですが、実際に見てみるとどうしてこれがさほど人気がなかったのかちょっと不思議で、正直私には天国と地獄とのおもしろさの違いがいまいちわからないと言うのが正直なところです。

強いて言えば、天国と地獄の方が夫婦のことを書いているのでよりわかりやすいといえばそうなのかも。身近というか‥。わかりやすいというか。

なんならこれよりつまらないけど有名な作品ってたくさんあるんじゃないかなとすら‥。風刺がちょっとわかりにくいとか?

オッフェンバックはヒット作品がたくさんあるので、青ひげはあまり有名ではなくなったのかもです。

どこが風刺?第二帝政時代を皮肉った

青ひげっていう童話は結婚した妻を殺してしまうという怖いお話なので、青ひげはバリトンとかバスとかそういう低い声が担当するっていうイメージだったのですが、オッフェンバックの青ひげはテノールです。

まずそこがかなりイメージと違うというか、最初見たときは違和感を覚えちゃいました。青ひげの登場で、「え?声が高いっ!」ていう感じです(笑)。

テノールが歌ってるしアリアもきれいな曲が多いので陰惨なイメージはもちろんなくてどちらかというと上品でいい人に見えちゃう、そんな青ひげです。

そもそもこのオペレッタは題は青ひげですが、主役にしてはあまり存在感がなく、ブロットの方がずっと目立っているんですよね。悪人にも見えないし、キャラが不明と言うのが正直な印象です。

第三幕で妻が死んで悲しいふりしているアリアもきれいな曲だから本当に悲しく思えるし。(演出にも夜と思いますが‥)

オッフェンバックのオペレッタは当時の風刺が込められているらしいのですが、「青ひげ」が初演された1866年当時はナポレオン3世の第二共和政から第二帝政になっていった時代で、それまで言論や出版など表現の規制が厳しかったものが徐々にゆるまってきた時代です。だからこそオッフェンバックのようなオペレッタも多くなっているんですよね。

何人もの妻を持つ所は好色と言われたナポレオン三世を風刺しているらしいのです。

ナポレオン3世の私生活は気に入った女性であれば貴婦人から庶民の女性、娼婦、踊り子など誰彼構わずだったという好色人だったようで、それを童話の青ひげとくっつけているわけですね。

バルトークの青ひげはある意味哲学的とも言えるような重くて超まじめなオペラになっていることを思うとあまりの取り上げ方の違いがおもしろいというか‥。

ただこれって現代の私たちが見るとピンとこないのは確かで、その点天国と地獄のように妻と夫のやりとりの方が永遠に人気があるのも仕方がないかなと思いました。

あとポベーシュ王っていうおかしな王様も出てくるんですけど妻の不倫相手をやたら殺してしまう所もおそらく風刺。

フランスのオペラとかオペレッタってちょいちょい首切り役人とか、王様は死刑が大好きとかそういうパロディが多い気がするんですよね。

これも当時の民衆の権力者に対するイメージだったっていうことなのかなとそんな気がしたのでした。

青ひげ簡単あらすじ

ではオッフェンバックの青ひげの簡単あらすじを書いておきます。

話は軽いのですが、3幕まであって正味2時間はあるので、休憩を入れると少なくとも2時間半はかかると思います。意外に長いなという印象。

<簡単あらすじ>

場所はフランスのブルターニュ地方。

村の娘フルレットと羊飼いのダフニスは愛し合っています。

フルレットは実はかつて行方不明になったポベーシュ王の娘エルミア王女、またダフニスも実は王子の身で本当の名前はサフィールと言います。

そして村にはブロットという男好きでちょっと(かなり)淫蕩な女性もいます。

このブロットは青ひげの6番目の妻に選ばれて結婚することになるのですが、エルミアを見かけた青ひげはもうエルミアの方に心を奪われている様子。

そしてひょんなことからフルレットがエルミア王女であることがわかりポベーシュ王の宮殿に行くことになり、自分の結婚相手の王子がダフニスならぬサフィールだったことを知り喜びます。

一方ポベーシュ王は嫉妬深くて、妻が話をしていたというだけで家臣を殺してしまうという困った王。5人も死刑にしているのです。

さて青ひげ城では(童話にちなんで)6番目の妻ブロットを殺すよう青ひげがポポラニに命じますが、実は妻たちはみなポポラニには殺されておらず生きていて、ブロットも死んだふりをすることになります。

ブロットが死んだと思った青ひげは、エルミアを7番目の妻にしようとポベーシュ王の宮殿にやってきます。

エルミアを奪いにきた青ひげをみてサフィールは決闘を申し込みますが、あっさりやられてしまい悲しむエルミア。

そこに青ひげに殺されたはずの妻たち、ポベーシュ王に殺されたはずの家来たち、それにブロットらがやってきて、自分たちは殺されそうになったが生きていると訴えると、王と青ひげは懺悔することになります。

最後はそれぞれがカップルになり、合同で結婚式をあげることになりハッピーエンドとなります。

ブロット役オルタンス・シュナイダー

さてこの青ひげというオペレッタはタイトルの青ひげよりもどちらかというとブロットが目立っています。特に前半はブロットが主役?と思えるくらいです。

このブロット役を1866年初演の際に歌ったのはオルタンス・シュナイダーっていう歌手です。

オペラをいろいろ見ていると初演当時の花形歌手っていうのがしばしば出てきて、その人ありきでオペラが作られていたりしたんだなあって思うんですよね。

その人の声域に合わせたり、その人をイメージして作ったり‥。オッフェンバックの場合そんな看板歌手の一人がこの人だったのかなと。

青ひげのブロットは原作にはいない役で、男と見れば好きになり誰でもいいっていう感じの淫蕩な女性で、だからと言って色っぽいというわけではなくあっけらかんと「何が悪いの?」という女性で、一番目立つ存在。

この個性的な役初演で演じたわけです。

シュナイダーは1833年フランスのボルドー生まれということなので、初演当時は33歳。この人はオッフェンバックの有名な作品の初演にたくさん出ているのです。

  • 美しきエレーヌ
  • ジェロルスタン女大公殿下
  • ペリコール

これら今でも有名な演目全てに出てるんですよね。ちなみに天国と地獄には出ていないです。天国と地獄の初演は1858年。

まだパリに来てそれほど経っていなかったからか、出産だったからか、または声質が違ったのかその辺まではわからないです。オッフェンバックの作品は日本では天国と地獄くらいしか有名じゃないんですけど、実はものすごく作品数が多いので、当然歌手たちはたくさんいたはずですよね。

ただ今残っている有名な演目にシュナイダーの名前があるっていうことはやっぱり相当うまかったんだろうなとなんとなく想像するわけです。

彼女が演じてる役はソプラノだったりメゾだったりするんですよね。名前が残っている有名な歌手にはよくあるんですけどおそらく彼女も音域が広かったんだろうかと。声は聞くことができないのでそんなことも思いました。

何れにしてもオッフェンバックのオペレッタのあるいはブフパリジャンっていう彼の劇場のメイン歌手の一人だったのだと思います。

青ひげ見どころ

オペレッタはオペラと違ってセリフが多いんですよね。

青ひげは元はフランス語ですけど他の国で上演するときは全部フランス語かまたはセリフはその国の言葉でやるか、または全部その国の言葉でやるか、そんなやり方になると思います。

日本でオペレッタを上演するときもアリアは原語、セリフは日本語っていうやり方をよくやってますよね。

そんな上演方法も見どころの一つかなと思います。

日本では以前は全部日本語っていうのが多かった気がしますけど最近はアリアは原語っていうやり方が増えてるかなとそんな気がしています。

第一幕はくじ引きでミス薔薇を選ぶシーンがあるんですけどそこでポルポラが歌う歌がちょっと変わっていて見どころ。そして淫乱といわれても気にしないと歌うブロットの歌も聞きやすくていい曲だなと思います。

ミス薔薇を選ぶ歌は「クープレ」っていって、クープレというのは話すように歌う曲らしいんですけど、ちょっと変わった音楽が多いんですよね。私は結構好きです。

オペレッタってセリフが多いからか「クープレ」が多いのかなと思います。ヨハンシュトラウスのこうもりでオルロフスキーが歌うウォッカの歌なんかもそうなんですよね。

なのでこういうのを楽しんで聞くのも聞き所見どころかなと思います。

第一幕でブロットが現れるシーンもそうですね。

あと第二幕でオスカル伯爵が最初に歌う「それは難しい仕事」もいい曲なのでおすすめ。

オペレッタなので全体にセリフが多いのですが、2幕の合唱なんかを聞くとやっぱりオペラっぽいなと思ったりもするので合唱も見どころ聞き所かと思います。

個人的に一番見たいのはポベーシュ王が出てきて家来のお辞儀の角度に文句をつけるシーン。ここは楽しいので見どころです。

王様って重厚なイメージがあって、ヴェルディの時代になると王様はバスが多くなってくるんですけど、バロックの時代はカストラートの高い声が王様をやっていたんですよね。

で、オッフェンバックの王様はテノール担当。オペレッタだし喜劇なのでオペラとはちょっとちがうけど王様をテノールがやるとちょっと間抜けな感じがするなあと、その辺も見どころかなと思います(笑)。この王様がおもしろいキャラなんですよね。

第二幕の王妃のアリアは優雅な曲でおすすめ。

余談ですが、海外のオペレッタを見ると結構重厚な声の人がやっているんですよね。だから聞きごたえがあるなあと感じます。

日本だとオペレッタは比較的軽い声の人がやるイメージなんですけど。ルネ・コロっていうヘルデンテノールがいたんですけど彼なんかも若いときオペレッタばかり歌っていたんですよね。

第二幕で青ひげがブロットとともに入ってくる行進曲は楽しげなので注目したい。

続くワルツ(通称キスのワルツ)も高貴な曲でさすがオッフェンバックだなあと感じるところなので見どころ聞き所。

青ひげに死亡宣告されたときのブロットの歌もなかなか良くて、全体に2幕2場前半の青ひげとブロットの二人のシーンはいい感じで好きな所、見どころだと思います。

そして第三幕の青ひげとサフィールの決闘はくだらない感じでおもしろいので見どころ。

ドタバタといえばドタバタだけど出演者も多くて楽しいオペレッタ。オッフェンバックの作品は日本では天国と地獄以外あまり上演されないけど、いろいろ見てみたいなと思います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です