コロナのものものしさがなくようやく普通に
今回の会場は池袋の芸術劇場。2020年11月1日の公演です。
劇場前の広場でちょうど野外コンサートのリハーサルをしていて、「新世界の4楽章」が流れてました。
しかも指揮が西本智実さん!。かっこいいなあと思いつつ時間なので会場へ。
さて、入り口でサーモの体温測定はありましたけど、ほとんど立ち止まる必要もなく入場、名前と座席も書かなくてよくて、
喫茶もちゃんとやっているし、歌手の人たちも透明のシールドとかつけてないし、
座席も一つおきではなく普通、終わったら歌手の人たちはちゃんと手も繋いで挨拶をするしと
要するに元のやり方に戻ってました。
よかったよかった。
日本語とイタリア語の混在加減が斬新すぎる
今回はフィガ郎とかスザ女とかパンフレットに書いてあったので、どんな風にアレンジしているんだろうと思ったのですが、実際に見た感想はかなり斬新。
よくあるのはアリアが原語、アリア以外は日本語っていうパターンなんですよね。
だからそういう感じなのかなーと思っていたんですけど
実際に見てみると全然違っていて、アリアも日本語とイタリア語あり、レチタティーヴォも両方あり、セリフも両方ありで
こういう混ぜ方する?っていうくらい思い切った混在加減なのです。いろいろ見てきたけどこういうのは初めて!。
最初のうちは伯爵と伯爵夫人絡みはイタリア語っていうくくりなのかなあって思ってみてたんですけど、そのうちイタリア語でも日本語でもどっちでもいいやって思えたんですよね。
むしろ混在するからおもしろくて。
伯爵がたどたどしく日本語を言ったりすると、オペレッタかこれは?と思っちゃうくらい(笑)。
フィガロの結婚ってオペラだからなのか高尚な雰囲気の演出が多いと思うのですが
内心「フィガロの結婚ってすごくくだらないストーリーだなあ」と思っていて、思い切り喜劇にしちゃってもいいんじゃない?!とくらいに以前から思っちゃってました(笑)
あとフィガロの結婚って意外に長いし、ストーリーがちょっと複雑なのに
「初心者向けのオペラ」に必ずあがってくるんですよね。
それも違和感があって、初めて見てこれってほんとにわかりやすいのかな?と疑問に思っていました。
でも今日は植木屋さんが途中で諸所に説明をいれてくれたのでよくわかりました。後半は少し少なくなったけどもっとあってもよかったんじゃないかな。
日本語のアリアにも字幕を入れてくれたのはよかったけど、若干残念だったのは日本語のセリフの時に何言ってるのかわからない時が何度かありました。
さすがに庭師さんのは言ってることはわかるんですけど歌手の人のセリフ部分がが早いとちょっと聞き取りにくく‥。
会場のせいもあるのだと思います。
セリフって結構アリアより大事なことを喋っていたりするからちゃんと聞きたいって、私は思っちゃうんですよね。
とはいえ、特に前半はストーリーがおもしろくて引き込まれました。後半はなぜかちょっとだけ眠くなってしまったけど‥。
舞台と衣装・明るい衣装がよかった
さて、芸術劇場にはオーケストラピットがないので、今日はコンサート形式かもしくはセミステージ形式なのかなと思っていたのですが、
舞台にオーケストラがいて、後ろの舞台部分を更に高くしてそこがオペラの舞台になっていました。
つまり普通のオペラ形式でした。あの一段高い舞台を作るのはかなり大変そうですけど、普通のオペラの形式で見られるのはやっぱり楽しいです。
舞台は基本的にずっと同じ。3本の大きな柱にはいかにも日本風の柄。
その中に人が入ったり出たりして物語は進んで行きます。
フィガロの結婚って意外と時間が長くて4幕までありますけど、今回は1・2幕3・4幕を続けての上演で休憩は一回。それでも3時間半に及びました。
衣装が全体に明るくてよかったです。やっぱりこういう楽しい話の舞台は華やかだといいなと思うので。
合唱の人たちの衣装が洋風のような和風のような装いでちょっと特徴的。
演出では、個人的にはカメラのシャッターを押すシーン、あれがおもしろかったし
歌舞伎調や文楽風が楽しめました。日本のものも好きですしやっぱりいいなと。
さらに細かいところではケルビーノが上手に虎の敷物に隠れたのが笑えた。
マルチェリーナが母親だと分かるシーンはかなりおちゃらけてましたけど
そうだよね!ここってふざけていい場面だよね。いいねいいねと。
それにしても思いきった演出ですよね。演出は野田秀樹さんですがさすがっていう感じなのかな。
実は個人的にはフィガロの結婚の伯爵ももっとふざけたキャラが好きなんですけど、今回はすごくかっこいい伯爵で、これならスザンナがなびいちゃっても仕方ないんじゃないのかなと思っちゃいました。
歌手について
今回最初から登場していたのは、庭師役で廣川三憲さん。
この人の語りでストーリーは確かによくわかりました。フィガロの結婚っていうのは要するにこういう砕けたお話なのよっていうのをはっきり言ってくれて。
伯爵役はヴィタリ・ユシュマノフさんというバリトン。
この人は昨年ジャミレと放蕩息子を見た時にもでられてましたが安定した声と端正な顔立ちで
ダメダメな伯爵にはどうしても見えなかったけど、来年はナイチンゲールにも出演予定とのこと。皇帝の役をやるのかな?そっちの方が合いそうな気もするのでちょっと楽しみ。
伯爵夫人はドルニオク綾乃さんというソプラノ。金髪のカツラがすごく似合う方で、若くて美しい伯爵夫人。声もよく響いてました。
スザンナを演じたのは小林沙羅さんというソプラノ。
この方も昨年かな、ヘンゼルとグレーテルのグレーテル役以来。
あの時より声のパワーが増したのかなと感じました。演技が上手で表情も豊か。
そしてフィガロ役は大山大輔さんというバスかな、バリトンかな。
フィガロってタイトルに名前がある割にそんなに目立たない役だと思っていたのですが、今回のフィガロは目立ってました。歌舞伎調のフィガロで声もすごく安定したいい声。またぜひ別のオペラで聞いてみたいです。
今回びっくりしたのがケルビーノで男性だったんですよね。村松稔之さん。
パンフレットを見てなかったので前半はずっとてっきり女性がやっているんだと思ってました。
ほっそりした若いケルビーノはイメージ通りでぴったり。日本のカウンターテナーの層もほんとに厚いんですね。あの見た目と声ならバラの騎士のオクタヴィアんもいけそう。
そのほかマルチェリーナは森山京子さんでマルチェリーナの雰囲気ぴったり。
バルトロは三戸大久さん。
三戸さんは「高田正人さんのWhy not?」でハエさんとカルメンの闘牛士の両極端な役をされてたイメージが残ってます。
バルバリーナ役はコロンえりかさん。今回は美しい人ばかりでした。
ソプラノの人は全体にちょっと似た声質の人が多いのかなという印象。それもあってか二重唱はとてもきれいでした。
今回全体にとても若い歌手の人が多いなという印象。
そのせいか会場も若い人が多かったですね。こんなにオペラに興味がある人がたくさんいたことにちょっと驚きでした。
しかも終わってもほとんど誰も席を立たず、大きな拍手が続いていました。
今回のフィガロの結婚はすごく変わった演出だったけど、日本人がすごく楽しめるフィガロの結婚だったんじゃないかと思います。
やっぱり楽しいのが一番!
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