スペードの女王(チャイコフスキー)怖いオペラ

スペードの女王はチャイコフスキー作曲のオペラです。

チャイコフスキーのオペラといえばこのスペードの女王以外にエフゲニー・オネーギンも有名で

どちらも原作はプーシキンです。

でも二つのオペラの雰囲気はかなり異なります。

オネーギンはどちらかというとほんわかしたオペラ、そしてスペードの女王はドラマ性が強く怖くて戦慄するオペラです。

 

プーシキンの原作とチャイコフスキー

 

プーシキンの作品

プーシキンはロシアを代表する作家のひとりで、その中の多くはオペラにもなっています。

作曲家チャイコフスキーもプーシキンの原作を元にしていくつかのオペラを書いていますね。

私が知るところは、

の3つです。

今回取り上げるスペードの女王は、プーシキンの短編小説がもとになっています。

原作のプーシキンという人は、38歳という若さでしかも決闘により亡くなっている人なのですが、

その短い生涯の中で、詩、小説、戯曲、など実に様々な作品を残しています。

小説も長編、短編、歴史物あり、また形式も韻文小説、散文小説があり戯曲もあります。

そして、ロシアを代表する作家だけあると思うのは、ストーリーが劇的でおもしろいということです。

プーシキンは死に至る決闘以前にもなんども決闘をしているという信じられない人物なのですが、

やはり熱い感情、熱くたぎるものを備えていた人なのかなと思います。

 

オネーギンとスペードの女王

チャイコフスキー作曲でプーシキン原作の

エフゲニー・オネーギンは韻文小説で比較的おとなしいオペラなのですが、

スペードの女王ははっきり言って全く違うタイプのオペラと言っていいのではないでしょうか。

怖くてゾッとする、人間の欲やオカルト的な怖さを感じるオペラです。

この二つのオペラからプーシキンの作品の二面性を感じるとともに、

チャイコフスキーの音楽の二面性も感じてしまう、そんな両作品ではないかと思います。

二つのオペラのうち見ていて引き込まれるのはスペードの女王ですが、

ストーリー的にスペードの女王はあと味が良いとは言えなかったのが正直なところです。

 

マゼッパ

チャイコフスキーは、同じくプーシキンの原作で「マゼッパ」というオペラを作曲しているのですが、

こちらは歴史上の人物、ウクライナの長、イワン・マゼッパを題材にしたオペラです。

白髪の年老いた冷酷なマゼッパを好きになってしまう、若くけなげなマリヤが、

おぞましい運命に翻弄されて、父を殺され、幼なじみを殺され、狂ってしまうという、

なんとも辛く劇的なストーリーのオペラです。

同じ狂乱でもランメルモールのルチアのようなどうしようもなく切ない事情とは異なり、

マゼッパには悪が存在するので暗さがあります。

プーシキンの描く世界には必ず「死」が付いて回るような気がします。

でもストーリーはおもしろい

そんな特徴を感じます。

 

初演と上演時間

初演

  • 原作:プーシキン
  • 作曲:チャイコフスキー
  • 初演:1890年
  • 場所:マリンスキー劇場

スペードの女王は1890年が初演なのでチャイコフスキーが50歳の時の作品です。

初演と同じ年に、チャイコフスキーはバレエ「眠れる森の美女」も初演しています。

作品数がとても多いチャイコフスキーですが、

1890年という年は、美しいバレエ音楽とドラマティックだけど暗いオペラという異なる種類の作品を世に出していたということになりますね。

 

上演時間

  • 第一幕:約65分
  • 第二幕:約60分
  • 第三幕:約45分

二回の休憩を入れると3時間半程度、カーテンコールを入れるとそれ以上になるかもしれません。

オペラはやはり、ちょっと長いと言われるのも仕方がないですね。

後半に行くほど緊迫感が増すオペラなので、時間の長さはあまり気にならないかもしれません。

この長いオペラに、主役のゲルマンはかなりのボリュームで出続けますので、

大変な役どころだと思います。

 

マリンスキー劇場

キーロフ劇場

マリンスキー劇場の旧称は、キーロフ劇場と言います。

ロシアは1991年までソビエト連邦でしたが、その期間はマリンスキー劇場はキーロフ劇場と呼ばれていたのです。

キーロフはソビエトの政治家の名前なんですね。

私などはまだどうしてもキーロフオペラの方が印象が強く、マリンスキー劇場と言われても、

あ、キーロフ歌劇場のことねと頭の中で変換してしまいます。

このマリンスキー劇場があるのはサンクトペテルブルクです。

ロシアの現在の首都はモスクワですが、首都がモスクワに移るまで長い間ロシアの中心は

ペテルブルクでした。

かつての都ペテルブルク

ペテルブルクは場所的にもモスクワよりヨーロッパに近く、18世紀からイタリアのオペラを中心としたオペラが入ってきていたんですね。

イタリアの作曲家パイジェッロのセビリアの理髪師の初演もペテルブルクで、当時一世風靡したのです。

政治も芸術も中心だったのは、かつてはペテルブルクだったというわけです。

ちょうど日本における、京都と東京のような感じではないでしょうか。

ロシアオペラの歴史

現在はサンクトペテルブルクとよんでいますが、

ソビエト連邦の時代はレニングラードという地名でした。

こちらも私などは耳にまだ新しい地名です。

そしてそれよりもっと遡ると、ペテルブルクという地名だったんですね。

ゲルギエフの存在

マリンスキー劇場といえば、まず指揮者ゲルギエフの存在が浮かびます。

キーロフ歌劇場の頃から長きにわたり、音楽監督を努めてきた世界的指揮者で

ロシアのオペラ指揮者といえばゲルギエフというくらいその存在は大きいのではないでしょうか。

現在は世界中のオーケストラの指揮も行っていますが、

キーロフ歌劇場の時代から始まって音楽監督として一体何年就任しているのかなと思うくらい、長きにわたりロシアのオペラを支えているというイメージです。

ただ、パワーがみなぎる眼光鋭いゲルギエフも、最近は髪が薄くなったなあなんてつい思ってしまいます。

 

スペードの女王あらすじと見どころ

あらすじ

不思議な魔のカード、野望で破滅する様を描いたオペラです。

ゲルマンは、リーザに恋をしますが、リーザは、婚約したばかり。

ところがリーザも、婚約したにもかかわらず、ゲルマンに惹かれてしまいます。

一方ゲルマンは野望が強い男で、不思議なカードの秘密を聞き出すために、リーザの祖母の部屋に忍び込みますが、

驚きと恐怖で、祖母は死んでしまいます。

ある夜、亡霊となって出てきた祖母は、カードの秘密をゲルマンに伝えます。

そして賭博場に向かったゲルマン。

予言通り次々に勝つゲルマンですが、最後に引いたはずのエースのカードが、スペードの女王に変わっていて‥。

 

見どころ

最初は恋愛ものかなと思うような内容ですが、第二幕後半あたりから、徐々に様相が変わっていきます。

特に、リーザの祖母から秘密を聞き出そうとするところの緊迫感は見どころで、

亡霊となって出てくるところは、恐ろしい感じさえしますがこちらが最もインパクトが強く見どころでしょう。

また賭博のシーンと、自らゲルマンが命を断つラストなど、ドラマティックな展開に、見終わってハアーッと、疲れを感じるかもしれません。

ゲルマンの役は出番が多いし、役柄的に細い声では合わないと思います。

私が見た時は、ロシア出身の歌手でほぼ占められていましたが、このオペラはロシアの人でなければつとまらないのではないかと感じたものです。

大きな身体から出るゲルマンの声は、最後まで疲れを知らない、大音量の迫力で、

この人の喉はどうなっているのかと思いました。

ただ、同じ大きな声でも、ワーグナーを歌うヘルデンテノールとはまた異なるものを感じました。

演出としての見どころは、やはり伯爵夫人が、亡霊として出てくるシーン

三つのカードが出てくる、賭博のシーンの演出です。

1990年代に、東京文化会館で見て以来、あまりスペードの女王の上演情報を見かけない気がしていましたが、2019年にはまた公演がありますね。

プーシキンの原作「スペードの女王」と比較、読んでみたらさらにおもしろかった

↑こちらもよければどうぞ。

 

<今後の公演>

2019年11月30日、12月1日マリインスキー歌劇場「スペードの女王」東京文化会館にて

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