ワーグナーのオペラを見たことがある人は、一般的にはあまり多くないかもしれません。
一方オペラファンの中ではもっとも熱狂的なファンはこのワーグナのオペラのファンで
ワグネリアンと呼ばれ、世界中にワグネリアン達がいるんですよね。
ワーグナーのオペラ
ワーグナーのオペラの特徴
ワーグナーのオペラを見に行きましたと、言うと
「体力ありますね」と言われることがあります。
ワーグナーのオペラの特徴の一つは
上演時間が長い
ということではないでしょうか。
通常のオペラでもコンサートより長いのに、ワーグナーのオペラはさらに長く、
もっとも長いニュルンベルクのマイスタージンガーというオペラはなんと正味4時間半もあります。
第一幕だけでも約90分あるんですよね。
休憩を入れると5時間を超えてしまいます。
それだけで嫌だ!という人もいそうです。
現に私もワーグナーのオペラを見に行くとお尻が痛くなることがあります(笑)。
それでも観たいのがワーグナーなのですが。
そしてワーグナーのオペラの特徴は何と言っても音楽と劇が緊密に結びついていること。
ワーグナーのオペラはそれまでの歌唱が中心だったオペラとは分けて、楽劇(がくげき)と呼ばれていますね。
途切れなく音楽と劇が流れ続けていくので、独立したアリアやレチタティーヴォはなく
オーケストラは鳴り続け歌手は歌い続ける感じです。
歌手には強く重厚な声がもとめられるので、ワーグナー歌いは体力ととても強靭な喉が必要だといわれるんですね。
ワーグナーは自身で台本も手がけているのですが、それはよくできたストーリーだと思ってしまいます。
というのもオペラの中には、特に古い時代のものは明らかに歌手を目立たせるためのアリアが中心だったり、
そのためにストーリーが稚拙で、どう考えてもおかしいでしょう、というようなオペラがしばしば見受けられるのです。
特にイタリアの18世紀のオペラはカストラートがいた時代で、カストラートを目立たせるような似たようなオペラがたくさん作られたんですね。
今ではほとんど上演されないのですが‥。
またワーグナーは登場人物と音楽のテーマを結びつける手法も使っており、
例えばニーベルングの指環(リング)なら、ヴォータンが出てくるときは必ずヴォータンのテーマが流れるのでわかるとか
大蛇ファフナーのときはチューバが必ず鳴っている、というようになっているんですね。
よくこういうのはモチーフっていわれます。
モチーフは動機とか小さい単位のことですね。
この手法は現代の映画やドラマでは当たり前に使われるようになっていますが、当時としては斬新なことだったのです。
ワーグナーの魅力は最初はわからないし
いろいろ見たあとでさえ魅力を語るのが最も難しいのもワーグナーかもしれません。
私自身ワーグナーをはじめて見たのはタンホイザーでしたが、途切れなく流れ続ける音楽と歌がわけがわからなくて
苦痛ですらありました。
いったいこれは何?という感じです。ところが今では大好きだから不思議です。
何がそんなにいいの?と聞かれてうまく答えられる人なんて果たしてどれくらいいるんだろうかとも思います。
音楽家同士なら和声がなんちゃらとか、なるのかもしれませんがそういうのを言われても私などはピンとこないんですよね。
ワーグナーの主要なオペラ
さてワーグナーはリエンツィというオペラで名前をあげたのですが、
ワーグナーらしい作品としてはその後に作られた以下の7作品と言われています。
- さまよえるオランダ人
- タンホイザー
- ローエングリン
- トリスタンとイゾルデ
- ニュルンベルクのマイスタージンガー
- ニーベルングの指環(リング) 以下4作
序夜 ラインの黄金
第一夜 ワルキューレ
第二夜 ジークフリート
第三夜 神々の黄昏
- パルジファル
ニーベルングの指環は上にあるように全4作品で一つのオペラになっていて、
音楽史において、史上空前の大作となったんですね。
すごいです。4つで壮大な物語になっているんですから。
ニーベルングの指環については、特別に舞台祝典劇などと呼ばれています。
さすがに4作品を一日で上演するのは演奏する方も見ている方も無理なので、一つを単独で上演することが多いですが、
中でも人気なのはワルキューレですね。
ワルキューレの騎行の曲は誰しも耳にしたことがあるのではないでしょうか。
ワーグナーのオペラはバイロイトの祝祭劇場で毎年必ず上演されており、中でもニーベルングの指環は4作全てを必ず上演することになっています。
さて、もしはじめてワーグナーのオペラを見るなら、さまよえるオランダ人と言われますが
それはストーリーもわかりやすく、何よりもっとも時間が短いからです。
正味2時間ちょっとくらいなので、普通のオペラとそんなに変わらないんですね。
ところが私がワーグナーを好きになったきっかけはもっとも時間が長いニュルンベルクのマイスタージンガーだったんですよね。
というのもこの7つのワーグナー作品の中では唯一喜劇的な内容なのです。
喜劇といってもオペラブッファやオペレッタのようなゲラゲラ、くすくす笑うような種類ではなく軽妙で
設定が靴屋の主人(マイスター)と若い二人という、庶民的な内容なところが他のワーグナー作品とは異なっているのです。
またのちのトリスタンとイゾルデのような半音階が特徴の音楽とも違って、マイスタージンガーはわかりやすい音楽ということがありました。
このオペラの第二幕にベックメッサーがリュートを片手におかしな歌を歌い始めるシーンがおもしろくて、ワーグナーのイメージが急によくなりましたね。
ワーグナーに興味を持ったのはそれからです。
ちなみにこの時ベックメッサーの役はヘルマン・プライという素晴らしいバリトン歌手が歌っていました。
ワグネリアンと呼ばれる人たち
ワーグナーは世界中に熱狂的なファンがいると言われ、ワグネリアンなどと呼ばれています。
長い上演時間にも関わらず、ワーグナーのオペラには多くの人たちが訪れるのです。
ワーグナーのオペラを観に行くと、普通のコンサートやモーツァルトのオペラなどと全く異なるのは、
圧倒的に男性ファンが多いことです。
椿姫のオペラのときは着飾った女性がたくさんいるのに、ワーグナーのときは男性ばかりでめっきり渋い感じになりますね(笑)
昨年神々の黄昏を観に行ったときに確認したら、私のいた横の列は私ともう一人以外は全員男性でした。
また、通常は休憩時間になると女性のトイレに長い列ができたりしますが、
ワーグナーに限っては男性トイレが長蛇の列になるのもおもしろい現象です。
それくらい男性ファンが多いんですね。
一度トリスタンとイゾルデをコンサート形式で見に行ったことがあります。(サントリーホールでした)
オペラはお芝居がある方がやっぱりおもしろいので、果たして人が入るのかなと思ったのですが、
行ってみたら、大勢のワグネリアンたちが来ていてほぼ満席でした。すごいですねえ。
さて、ドイツのバイロイトにはワーグナーが作ったワーグナー専用の劇場があります。
バイロイト祝祭劇場と行って殿堂のオペラハウスですね。
「一生に 一度は行きたい バイロイト」
というくらい、バイロイト詣では世界中のワグネリアンたちが憧れるところです。
もっともこの劇場は椅子が硬く肘掛もなく冷房も効かないのでとりわけ体力がないと無理かなと思います。
でもワーグナーのオペラは長いけど全く長さを感じないんですよね。
長いどころか一音も聞き逃したくない、という気持ちです。
最近は日本でもワーグナーの上演が増えてきたのでとても嬉しい限りです。
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