オペラを見てみたいけどオペラってどこの国のものなの?
そんな疑問を持ったことはないでしょうか。
今回はオペラってどこの国のものがあるのかについてです。
一番多いのはイタリア
歴史的にも数からいってもダントツに多いのはやはりイタリアのオペラです。
オペラといえばイタリアという国のものと言ってもいいくらいかもしれません。
もともとオペラが生まれたのはイタリアなので歴史も古く、最古のオペラと言われているのは
「エウリディーチェ」というオペラ。
これが1600年の初演と言われています。
それから400年以上経った今でもオペラといえばイタリアというイメージが強いのは
後世に残った素晴らしい作品がたくさんあるから、ということですね。
イタリアの国民にとってもそれは同じ気持ちのようで
だからこそ今でもスカラ座でブーイングするような熱烈なファンがいるのだと思います。
「ここをどこだと思ってるんだ、スカラ座だぞ」という人がいるのも
それだけオペラの本拠地だというプライドの表れなのだと思います。
確かにイタリアには非常に有名な作曲家がいます。
- ロッシーニ
- ドニゼッティ
- ヴェルディ
- プッチーニ
などなど、言い出したらきりがないくらいたくさんいます。
そしてもう一つイタリアオペラが最も多い理由は
あまりにイタリアオペラが盛んになったので、イタリア以外の国でもイタリアオペラが作られていたということがあると思います。
とくに18世紀のバロック時代に作られたオペラの多くはイタリア語で作られていて
オペラはイタリア語でなきゃ、みたいな風習があったんですね。
ヘンデルはドイツの国の人だけどイタリアオペラを作っているし
少し後のモーツァルトはオーストリアの国の生まれだから母国語はドイツ語だけどフィガロの結婚をイタリア語で作っています。
という具合ですから、イタリアのオペラがとても多いんですね。
ちなみにヘンデルという人はドイツの生まれで、最初はドイツ語のオペラを作っていたのですが、
イタリアオペラの波に迎合するように、イタリア語のオペラに路線変更していった人です。
さらに活動の地は英国が主でした。
なのでヘンデルのオペラってイタリアオペラでもないし、ドイツオペラと言うのもちょっと違うし、
ましてイギリスオペラなんて言わないし、という具合に
実はオペラってどこの国なのと聞かれて、微妙な立ち位置の作品もあるわけです。
上にあげたヴェルディやプッチーニなどは生粋のイタリアオペラの人と言っていいんじゃないかと思います。
意外に古いフランスオペラ
フランスという国では英語はほとんど通じない、フランス国民ってわかっていても英語は使わないと言われるほど
フランス語という自国言語にとてもプライドを持っている国だと思います。
それはオペラの世界においても感じられることです。
19世紀の半ば頃になると、ヨーロッパ各地で、自分の国の言葉で作るオペラが出てくるのですが、
フランスに関してはそれを待たずに早い時期からフランス語を重視する姿勢が見られるんですね。
イタリアオペラが全盛だった18世紀からフランスではオペラをフランス語で作るという歴史があるのです。
そういう意味ではフランスという国のオペラの歴史はかなり古いと言っていいと思います。
イタリアオペラであってもフランスで上演するときは作曲家がフランス語に作り直す、という国だったのです。
日本人は外国語がわからないから日本語に訳して歌う、というのとはちょっと違うんですよね。
作曲家自身が書き直すわけですから。
その極め付けがグランドオペラと呼ばれる世界です。
グランドオペラは18世紀後半から19世紀前半かけて盛んだったオペラで、
その特徴は何と言っても豪華であること。
バレエが必ず入るし、舞台セットも華やか、上演時間も長く5幕まである、大合唱がある、など。
絢爛豪華なオペラ=グランドオペラ
と言っていいのではないでしょうか。
グランドオペラで有名な作曲家は
- オベール
- マイアベーア
などがいるのですが、普通は知らないんじゃないかと思います。
というのも現在ではあまり上演されないから。
そもそも長くて、正味4時間近くあるし、4時間じっくり見るだけのおもしろさがあるわけでもないし、豪華絢爛な舞台なんて興行的に無理ですよね。
当時、これほど長くてもよかったのは、ずっとかしこまって見ていたわけではないからです。
好きなときに来て見たいところだけ見て好きなときに帰る、というような観劇スタイルができていたんですね。
現代の日本のように、飲食禁止、前のめりも禁止、ガサゴソと音を立てるのもダメ
という厳しいマナーを求められる時代に、こんな長いオペラは無理ですよね。
また、グランドオペラは会場も豪華でした。
グランドオペラが上演されたのは現在もある、パリ・オペラ座。
通称ガルニエ宮と呼ばれるのは、作ったのがシャルル・ガルニエという建築家だったからですが
パリオペラ座の豪華さ、重厚さはやはり抜きん出ていると思います。
フランスという国では、当時この豪華なオペラハウスで、豪華なグランドオペラが開催されていたと言うわけですね。
このように、フランスの国にはグランドオペラの伝統があるものの、現在グランドオペラは当時のような豪華さと内容で上演されることがほとんどないので、
実際にはフランスのオペラというと、もう少し時代が新しい作品の方が有名になっています。
- オフェンバック
- サン・サーンス
- ビゼー
- マスネ
などの作曲家たち。
マスネのオペラ「タイース」の中の「タイースの瞑想」は単独でもよく演奏されます。
中でもビゼーはカルメンというオペラで特に有名ですね。
ドイツ・オーストリアも強い
イタリアオペラの次に多いのがドイツ物と呼ばれるオペラでしょう。
ドイツとオーストリアは別の国ですが、
オペラの世界においてはこの二つはセットで表現されることが多いです。
どちらもドイツ語圏で歴史上同じ支配下だったということもあります。
イタリアオペラに次いでズラリとオペラ作品が並ぶのがドイツオペラです。
ドイツのオペラの歴史も実はとても古く、18世紀初め頃からあるのですが、
途中イタリアオペラの波に飲まれて、イタリアオペラになってしまった長い過去があります。
でも19世紀からドイツらしいオペラがめきめきと復活してきて
その後の活躍がめざましく、現在上演されるオペラはイタリア物と並んでドイツオペラが多いと思います。
代表的な作曲家は
- グルック
- モーツァルト
- ベートーヴェン
- ウェーバー
- ワーグナー
- ヨハン・シュトラウス
- リヒャルト・シュトラウス
などなど。
作曲家を並べると有名なのはドイツの方が多いかなと思うほどです。
それくらい19世紀以降のドイツオペラは素晴らしい作品がたくさんです。
この中でモーツァルトは生まれはオーストリアだけど、イタリアオペラも作っているし、ドイツオペラも作っているという、狭間の時代の人ですね。
その他の国と日本
オペラというと上にあげたイタリア、フランス、ドイツがやはり主流なのですが、
それ以外の国はオペラがないのかというと、ちゃんとあるんですね。
19世紀以降ヨーロッパ各地で、自国の言語を使った国民的なオペラがあちこちで登場しています。
ロシアはグリンカやボロディン、ムソルグスキー
代表作品はイーゴリ公や、ボリス・ゴドゥノフなど。
イギリスは長くオペラ不毛の地だったけど近年になってブリテンが出てきました。
代表作は「ピーター・グライムス」
そしてチェコには
- ドヴォルザーク
- スメタナ
- ヤナーチェク
がいるのですが、日本では彼らのオペラはあまり知られていないですね。
チェコにはプラハ国立歌劇場という立派な劇場があるのですが、
そこもチェコの作曲家よりモーツァルトとの関連が強い劇場というイメージが強い気がします。
最後に日本はどうかというと
日本でオペラが生まれるのは、やはり遅くて20世紀になってからです。
山田耕筰が20世紀前半に黒船というオペラを作っています。
日本のオペラについても、新国立劇場では、意欲的に取り組んではいるようですが、
上演が多いのはやはりイタリアオペラ、ドイツオペラですね。
イタリアの国ではどうしてもイタリア物のオペラが多くなるし、
ドイツ圏の国ではドイツ物オペラが多くなるのは仕方のないことだと思いますが、
そんな中で日本の良いところは、オペラの世界ではまったくの新興国なので、
歴史的なしがらみがない分、良いものは何でも取り入れることができるところではないかと思います。
最近は世界的な歌手も招致しているし、レベルの高い公演が多いと思います。
いろんな国のオペラをやってくれるようになって、ますます幅が広がればいいなと思いますね
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