ようやく元に戻ってきた感のオペラ「魔笛」
- モーツァルト「魔笛」
- 2021年9月公演 二期会
- 東京文化会館にて
会場は平日夜の公演だったことや宮本亜門さんの演出ということもあってか、比較的若い人が多いかなという印象でした。
東京は緊急事態宣言中の中での公演だったのですが、オペラもかなり元どおりの公演に戻ってきた感があります。
検温チェックはありますが、入り口で来場者カードを記入する必要もなくなりました。
一階最前列の座席も以前は3列以上空けていたものを今回は2列のみ。席を一つおきにすることもなく、
何より歌手の人がフェイスガードや透明のマスクをつけないのはやはり見ていて自然でいいなあと思います。
一時はソーシャルディスタンスということか、演者の人同士が触れることも明らかに避けていたけれどそんな感じもなく自然に手を握ったりハグをしたり。
そんな普通が戻りつつあるのは本当に見ていて嬉しい限りです。
お芝居感が強い
今回の「魔笛」をみて個人的に感じたことは「音楽、歌」と同じくらい「お芝居」要素が強いのかなという感じです。
そしてそのおかげなのか良かったのは後半の試練のところが今まで見た魔笛で一番しっくり腑に落ちたということです。ああそういうことだったのねと。
これまで魔笛を見るといつもなんとなくストーリーのごちゃごちゃした感じや、分かりにくさを感じていたんですよね。特に後半について。
試練を受けるという割にどこが試練なのか何が試練なのかがよくわからなかったし‥。
それが今回の魔笛をみて二人が試練を乗り越えるというところがとてもわかりやすくて、あっそういうことなのねと。
今回は舞台セットはほとんどなくてプロジェクションマッピング?で状況を表していました。
最近この手の演出って最近のオペラでは多くなっているのは確かですが、おおかたは映像で雰囲気で表したり、季節を表現したりという漠然とした使い方が比較的多い気がします。
それに対し今回の魔笛は大蛇が出てきたり、神殿になったり、水があふれたり炎がでたりするスピード感のある映像で、それは魔笛のストーリーを理解するのにとても助かった気がします。
こうやって美術とかセットがなくなっていってしまうのも一抹の寂しさを感じますが、これも時代の流れですね。
一方で、セットはなくても衣装がとてもカラフルでちょっとおとぎ話風でおもしろかった。
夜の女王と3人の侍女の胸を強調した衣装は、「え、本物の胸?オペラ歌手ならそうかも」と思ったりしましたが(笑)さすがに違うと思いますが、なかなか思い切った衣装だなと。
僧侶たちの衣装もまた統一した異世界感があってよかった。
対するタミーノがやけに普通の人間っぽくて、というかサラリーマン風で、最初はうだつが上がらない感じに見えたのですが、それぞれの違いがよくわかってそれがいいのかもと、徐々に思ったのでした。
今回の魔笛の演出では、最初と最後は、現在で途中は回想なのかゲームの中なのか、夢なのかそこら辺は最後までよくわからなかったです。(最初はゲームだと思ったのだけどどうも違うのかなと)
また、今回は猿も何匹か出てきていたけどあれもなんだったのかな。おもしろかったけど。動物ってやっぱり目を引きますよね。
それからもう一つすごく印象に残ったのはやはり3人の童子。これって通常は女性がやると思うんですけど、今回は本当に童子、男の子たちだったんですよね。これは大注目だし良かった。
というのも、3人の侍女と3人の童子はどちらも女性3人がやるのが普通で、それだとどっちがどっちか正直わかりにくかったんですよね。音域も [ソプラノ] [ソプラノ] [メゾ] で同じだし。
毎度3人は一緒に出てくるし。
その点今回童子役が男の子だったのはすごく分かりやすかった。
こんなに童子の出番ってあったんだなと今回思ったので、やはり今までは私の中で童子と侍女がごっちゃになっていたのだと思います。
しかもボーイソプラノってきれいなんですよね。癒される。
この3人の童子については私の中では一番ブラボーを言いたいところかも。
あとなぜか今回はフリーメイソン由来とかなんとか言われているジャジャーン!っていうのが3回が流れるところ。それもなぜかすごく分かりやすかったです。どうしてなんだろ?
そしてあちこち「3」が確かに多いなと思ったのでした。
歌手について
魔笛って主役は誰かなって考えるとやっぱりタミーノだと思いますが、同じくらい目立つキャラクターがたくさん出てくるオペラなんですよね。
それも人気の理由かも。
今回タミーノを歌ったのは金山京介さんという方。
この人は以前「後宮からの逃走」のベルモンテ役以来。今回の魔笛とちょっと似たような恋人役だったと思います。
見た目と声が誠実な恋人役に確かにぴったりかも。
というわけで今回のタミーノもぴったり。
シャルパンンティエの「ルイーズ」というオペラではボヘミアン役でその時もやっぱり目立ってました。
恋人のパミーナは嘉目真木子さん。
昨年「メリー・ウィドウ」の美しいヴァラシエンヌ役でみたところ。
嘉目真木子さんは「魔弾の射手」のアガーテ役を見て以来忘れられない人です。
見た目も美しいけど、何と言っても低音も美しいソプラノっていう感じかなあ。
今回はよく動く活発なパミーナ役でそれも意外でした。
愛は消えてしまってのアリアはとても素敵でした!。
ザラストロを歌ったのは妻屋秀和さん。この役は本当にぴったり。
最近だとイオランタのルネ王がぴったりだと思ったけど今回のザラストロも。堂々とした王様系の役はいいですよねえ。
あと夜の女王を歌ったのは安井陽子さん。数年前の「魔笛」でもやはり夜の女王だったと思います。
あとホフマン物語のオランピアも。なんとなく夜の女王って高いところから歌うイメージがあったんですけど今回は同じ高さからのアリア。
その分等身大の普通の人っぽい感じも少ししたけたけどやはり復讐のアリアはワクワクして、聞きどころですね。
パパゲーノを歌ったのは萩原潤さん。今回はみなさん演技派だったけど中でもパパゲーノは出番も多いし、ちょっとダメ男的な感じが魅力的でした。
パパゲーノとパミーナ二人のシーンも意外に多いんですよね。二人の二重唱もよかったなあ。
そしてパパゲーナを歌ったのは種谷典子さん。
パパゲーナって出番は実は少ないんですけど結構インパクトが強い役だと思うんですよね。
おばあさんだと思ったら実は若くてきれいな女性だったっていうのがなんともいい。
おばあさんの衣装をとったらいったいどんな人かな?とそれもこのオペラの楽しみの一つじゃないかと思っちゃいます。
今回もかわいらしいパパゲーナでした。
3人の童子については前にも書きましたが、今回の魔笛では大活躍。
出番も多いし歌も多いし、よくこんな重要な役をさらっとこなしちゃうのねとほんと感心しちゃいまいした。
そして今回キラリと光っていたのが高橋淳さんのモノスタトス。
今まであまり気にしてなかった役なんですけど、今回の魔笛ではすごくモノスタトスが存在感があって良かったです。
毎回オペラってやっぱり発見があります。同じオペラを見ても全然違うし、違うからおもしろいのかなと。
そしてモーツァルトってやっぱり音楽が素晴らしいと改めて思いました。
中でも今回は合唱の良さに気がつきました。今まではアリアに目が行きがちだったんですけど‥。
魔笛ってやっぱりおもしろいです!。
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