フィガロの結婚(モーツァルト)実は堕落した貴族を批判?

モーツァルトのオペラ、フィガロの結婚は魔笛と並んで人気のあるオペラです。

このオペラは、ボーマルシェと言う人が書いた三部作の中の第二番目の物語。

美しいアリアがたくさんあり、また内容的にも楽しめるオペラですが意外に時間が長めのオペラでもあります。

フィガロの結婚を見に行くと、観客にはちょっと女性が目立ちますから

女性に人気があるオペラとも言える気がします。

今回はフィガロの結婚の解説と見どころについて書いてみます。

成立と初演

  • 作曲:モーツァルト
  • 初演:1786年
  • 場所:ウィーンのブルク劇場

モーツァルトが30歳の時の作品です。

ザルツブルグ生まれのモーツァルトは20歳の時にウィーンに出ます。

モーツァルトは、ウィーンでの第一作目として、オペラ「後宮からの逃走」を作曲しましたがこのオペラはドイツ語でした。

オペラって何語?

当時のウィーンはオペラといえばイタリアという風潮が強くあり、

これはウィーンに限らず、ヨーロッパの広い範囲での風潮でもありました。

オペラの世界ではイタリア人イタリアオペラ、そしてイタリア語が重んじられていたんですね。

イタリアはオペラの歴史を見ても確かに伝統があります。

オペラの歴史

そんなこともあり、モーツァルトのオペラの中で後宮からの逃走「魔笛」はドイツ語ですがイタリア語のオペラの方を多く作っていて

フィガロの結婚もイタリア語なのです。

さて、フィガロの結婚の初演の年の2月には、

ウィーンのシェーンブルン宮殿のオランジェリーの間において

サリエリとモーツァルトのオペラ競演が行われているのもちょっと興味深いことです。

(現在でもオランジェリーの間はありますので、観光に行かれた際はのぞいてみるのも良いと思います。)

イタリア出身のサリエリは、後にウィーンの宮廷楽士長になるほど、当時は絶大な力を持っていた人なんですね。

現在ではあまり知られなくなっていますが‥。

その競演の時の演目は

  • サリエリ:まずは音楽それから言葉 一幕60分
  • モーツァルト:劇場支配人 一幕20分(芝居を入れるともっと長くなることも)

この競演ではサリエリの方に人気が集まったといわれていますが、

現代での二人の知名度は、圧倒的にモーツァルトですよね。

競演の時オランジェリーの間で聞いていた当時の人々は二人の作品にどんな感想を持ったのか‥ちょっと興味ありますね!。

さて、モーツァルトがイタリアオペラで成功するために次のオペラに選んだのが、フィガロの結婚という題材でした。

きっかけはパイジェッロという人が作ったロッシーニと同名のオペラ「セビリアの理髪師」だったと言います。

パイジェッロという人は、当時ロシアの宮廷に仕えていてロシアでセビリアの理髪師を大成功させていました。

その後セビリアの理髪師はウィーンでも上演され、

それを見たモーツァルトは、続編の話のオペラ化に取り組んだと言われているのです。

ロシアのオペラ

今では少ないけど同名のオペラとか同じ題材のオペラって実は結構あるんですよね。(あったというか‥。)

セビリアの理髪師といえば、

今では、ロッシーニのセビリアの理髪師の方が、有名ですが、

この時代ロッシーニはまだ生まれていません

当時のパイジェッロの人気はかなりのものだったんですね。

モーツァルトがその人気にあやかり、セビリアの理髪師の原作の続編を題材に選んだのは、当然ありそうなことだと思います。

原作のボーマルシェの三部作というのは

  1. セビリアの理髪師
  2. フィガロの結婚
  3. 罪ある母

の3つです。

モーツァルトは、このうち2番目の「フィガロの結婚」を題材にしたわけですね。

3番目の「罪ある母」という話もミヨーという作曲家によりオペラ化されていますが、残念ながらこちらは私は目にしたことはありません。

さて、フィガロの結婚は当初成功したものの、その後あまり上演されなくなってしまいます。

理由は、貴族の堕落した生活を浮き彫りにしている風刺的なオペラでもあったことや、

モーツァルトがイタリア人ではなかったことだったと言われています。(やっぱりオペラはイタリア人主流だったっていうことですよね)

ところがフィガロの結婚が、お隣のプラハで上演されるとこれが大ヒットになったのです。

それからというもの、フィガロの結婚は現代に至るまで大人気のオペラとなっているんですね。

モーツァルトはプラハでの空前の大成功に大喜びだったと言います。

その後、ドン・ジョバンニ皇帝ティートの慈悲も、プラハで初演していることを見ても、

プラハとモーツァルトの相性は、とても良かったということだと思います。

なので、今でもプラハからの引っ越し公演があったりすると、フィガロの結婚かもしくはなにかしらモーツァルトのオペラを入れるの傾向があるような気がします

それくらいプラハとモーツァルトは縁が深いんですね。

フィガロの結婚・あらすじと上演時間

<簡単あらすじ>

場所はアルマヴィーア伯爵邸。

伯爵家に使仕えるフィガロと伯爵夫人の侍女スザンナ結婚の日一日のドタバタ物語です。

物語の軸は、結婚するスザンナに対し初夜権なるものを実行しようとする伯爵

それを阻止しようとするフィガロとスザンナです。

それに加えて夫の愛が冷めてしまって嘆く伯爵夫人がいて

また、小姓のケルビーノは若くて女性と見れば誰にでも言い寄ります。

伯爵夫人だろうとスザンナだろうと、誰彼となくちょっかいを出そうとする。

そしてフィガロに言い寄る年増の女中頭マルチェリーナまで登場。

スザンナと伯爵夫人が入れ替わったり

ケルビーノとスザンナが入れ替わったり、

ケルビーノが隠れたりと、てんわやんわの一日ですが最後はハッピーエンドに終わります。

<上演時間>

  1. 一幕・・50分
  2. 二幕・・45分
  3. 三幕・・40分
  4. 四幕・・45分

休憩を入れずに3時間。意外に長いオペラですね。

楽しいストーリーですが、かなりいろんな人が入り組んでいる話なので、

この長さになるのは致し方ない気がします。

さて、あらすじにある初夜権とは結婚税とも呼ばれるもので、領主に処女を捧げるかさもなくば税金を支払うか、と言うものです。

古代ローマをはじめ、各地に似たような風習があったといわれているんですね。

実際にヨーロッパでも11世紀〜13世紀頃、場所により存在したと言われています。

今では考えられない風習なのですが、実際にあったというから驚きな気がします。

さて、フィガロの結婚の原作はボーマルシェと言う人ですが、

オペラの台本はダ・ポンテという宮廷作家です。

この、ダ・ポンテという人の台本がまた良かったんですね。

モーツァルトのオペラ作品の中でも、現代まで、特に人気があり、上演回数が多いのは

ですが、

魔笛以外の3つについては同じくダ・ポンテが台本を書いているのです。

この3つのオペラを見ると、確かに似通ったものを感じます。

特にコシ・ファン・トゥッテ

コシ・ファン・トゥッテとは「女は皆こうしたもの」という意味なのですが、

これはフィガロの結婚の方に出てくる言葉なんですね。

似ているのは、当時の皇帝がフィガロの結婚を見て気に入り、この言葉を使って新作を作るように言ったからできた

ということもあるでしょう。

さて、ダ・ポンテの台本はよくできている、すばらしいと言われていることが多いです。

オペラ・魔笛がおとぎ話風で、途中からちょっと不思議な話だなという感じが拭えないのに比べると、

人間関係がちょっと複雑ではあるけど、フィガロの結婚は良くできたストーリーじゃないかと思います。

ただ、あまりにいろんなことが盛り込まれすぎて初めて見た人が果たしてわかるんだろうか、と言うのはちょっと感じます。

椅子に隠れたり衣装部屋に隠れたり、二人が入れ替わったりと、かなり筋書きを読みこんでおかなくては

わかりにくいんじゃないか、というのが個人的な感想です。

私などは、横文字の名前がなかなか覚えられない方ですし、特に衣装が似ていたりすると

これって誰だっけ?と思ってしまうことがしばしばあります笑。

また、こんなに貴族の家って堕落しているの?と思われても仕方ないような話なので、

当時の貴族がこれを見て怒ったのもわかる気がします。

それに、フィガロに言い寄るマルチェリーナが実はフィガロの実の母親だったというくだりは

そんなのあり?と思っちゃいますね笑。

また若いケルビーノも誰彼なく言い寄っていますが、ケルビーノという存在自体が必要なのかななんて

内心思ったりしていたのですが(ケルビーノのアリアはすごくいいけど‥)

ケルビーノという役は、実はボーマルシェの三部作の中の次の物語「罪ある母」に関係する重要な登場人物なんですね。

「罪ある母」は前作2つと比べると、とてもシリアスで暗い話なのですが、

伯爵夫妻の二人の息子のうち、次男は実は伯爵夫人と夫の子供ではなく、

ケルビーノの間の子供と言う設定なのです。うーん、なるほど。

つまり全体を見ると重要な役柄なわけです。

もっとも、能天気なケルビーノも「罪ある母」においては戦場で悲惨に死んでしまうのですが‥。

フィガロの結婚の見どころ

モーツァルトが、ウィーンで作った渾身の作品であるだけに

アリアが随所にあります。

またアリアだけでなく二重唱や三重唱などもいいんですよね。

有名なアリアが多い=オペラも有名

という典型かもしれません。中でも

  • 第一幕の三重唱「女はみんなこうしたもの」
  • フィガロがケルビーノに向かって歌う「もう飛ぶまいぞこの蝶々
  • ケルビーノが伯爵夫人に対して歌う「恋とはどんなものかしら

などはとりわけ有名。女はみんなこうしたものという部分は、4年後のコジ・ファン・トゥッテというオペラの元になっている部分でもありますね。

実にアリアが多いので、

自分はどのアリアが好きかなと、思いながら聴くのも良いのではないでしょうか。

ちなみに私はやはりケルビーノの「恋とはどんなものかしら」が一番好きですね。話の流れの中でこの曲が最も美しく聞こえる気がするからです。

フィガロの結婚はちょっと長いけど、きっと楽しめるオペラだと思います。

ブルク劇場です
ブルク劇場の中

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