フィデリオ2020年9月二期会ようやく新国立劇場再開!・いつもと違う序曲で始まった

新型コロナのあとしばらく行っていなかった新国立劇場のオペラパレスに行ってきました。

やっと‥という感じです。

演目はベートーベンのフィデリオ。困難を乗り越えての再開という意味ではこの演目はぴったりかも。

実はもともとは行く予定じゃなかったんですけど、新型コロナで指揮者が大植栄次さんに変わったので、大植ファンとしてはじゃあ行こうかなとなっちゃいました。

  • 2020年9月5日
  • 新国立劇場オペラパレス
  • 指揮:大植英次
  • 主催:二期会(共催:新国立劇場、藤原歌劇団)

コロナ後の新国立劇場は喫茶無し、テーブルも無し

久しぶりのオペラパレス♪

入り口の前でまず「入場者カード」を書かされました。名前と電話、席番号です。

これは前回の藤原歌劇団のカルメンの時と同じ。

検温もあって、チケットは自分でちぎって入場しました。

もちろんマスク着用です。

いつもなら飲み物とかケーキとかカナッペとか売っているんですけど、今回はそいうものは一切無し。

予感はしていたので、外で食べて行きましたけど、中でサンドイッチでも食べようと思っていた人は困ったんじゃないかな。

飲み物は一応ペットボトルのものを販売していましたけどお水程度でした。

テーブルもなく椅子は一方向を向いていてなんとも殺風景な様相。

私はシュークリームとかカナッペとか何かしら食べるほうなのでちょっと残念。

そういえばレストランマエストロはどうなったんだろう。

早く元に戻ってほしいけど‥。

今までのように入り口でチラシを配るのもなしで、テーブルから自分で取るようになっていました。まあこれは仕方ないかな。

興味があるチラシだけ取れるから良い気がします。

座席は一つおき(主催者には悪いけどこれは嬉しい)。隣に変な人が来る心配がありませんね。

イライラおじさんとか来たら最悪ですから(笑)

一階の前3列は使わないというのは、なんかもう当たり前になった感がありますが、小さな劇場ならしかたないけど、空けなくてもいいような気もしますけど

大事をとってということなんでしょうね。

オーケストラの人たちはマスクをしている人、していない人。両方でした。

歌手の人は藤原歌劇団のカルメンの時のようにフェイスシールドかな?と思いましたが、それはなかったです。

ただ、透き通る幕が前の方にあって、そこに演出効果でいろんな物が映し出されていましたけど、あれはもしかして、飛沫防止の意味もあったのかなと、あとでちょっと思いました。

いずれにしてもコロナ対策は万全すぎるくらい万全にやってくれていました。

フィデリオの演出・ちょっと難しい歴史の教訓

フィデリオってもともと高校生が勉強の一環で観に行くような超まじめなオペラなのですけど

今回のフィデリオはとりわけまじめ!なフィデリオでした。

いきなり

ARBEIT MACHT FREI ?(働けば自由になれる?)

というドイツ語が現れ、これはアウシュビッツに残る言葉らしいのですが、

ヒトラーと関連付けてずっと進むのかなあと思うと、映し出される映像にはベルリンの壁なんかも出てきて

時代は徐々に新しくなっていきました。

シラーの言葉や平塚らいちょうとか。

なんていうか‥記録映画を見せられている感じもあり、

難しい!重い!暗い‥ちょっとつら!というのが最初の私の率直な感想でした。

目を背けちゃいけないこととか、忘れちゃいけないことがあるのはわかるし

良いこと言ってるんだろうなとか、それはわかるのですが、

そういうのが苦手な私には正直ちょっと重かったです。

とはいえフィデリオはそういうオペラだからたまにはこれで良いのかもしれない。

気楽に楽しもうっていうオペラではないですもんね。

ただ前々から高校生にこれを見せるっていうけど、これを見て何を思うんだろう、

少なくともオペラを好きになるための導入にはならないんじゃないかと思っていたんですけど、今回もまた同じようなことを思ってしまったのでした。

一方、舞台のセットは、塀と大きな階段が印象的。

簡素だけど重厚で、フロレスタンがいる地下牢ではとりわけ塀が高くなっていて

絶対出られない雰囲気などオペラの雰囲気には合ってるなと思いました。

舞台のセットって何もないところから作るわけだから、いつも感心しちゃいますね。

最後の合唱の時に舞台の奥が開いて、マスクをつけた合唱の人たちが月の放物線のように並んでいたのは印象的でした。あの舞台ってずいぶん奥行きがあるんですよね。

終わってからの挨拶の時には、舞台の左側の舞台裏まで見えちゃってましたけど、あれはなんでだったのかな。

そうそう、最後に会場を明るくする演出は二期会のお得意というか、私はこれで3回目の気がします。

二期会のローエングリンの時とあとはちょっとなんだったか忘れましたが。

音楽と歌手について

序曲がいつもと違った

カチカチという音は時代が刻む様子を表しているんでしょうね。過去から現代に。

さて、序曲が始まるとあれ?という違和感が‥

こんな曲だっけ?

かといって序曲をそらで覚えてるわけではないのでこんな感じだったのかなと思いつつも

なんか長い気がする‥

で、第2幕の途中でレオノーレ序曲が入らなかったので、そこでようやく気づきました。

あれ?もしや最初の序曲がレオノーレだったの?と。

あとで見たら、今回はやはりレオノーレ序曲が冒頭だったのだそうです。

そうだったんだ!

いつもの序曲の方が勇壮な感じがするけど、公演によってこういう変化があるのはちょっとワクワクするものです。

フィデリオ役・土屋優子さん

さて今回のフィデリオ役土屋優子さんという方。

この方の声は初めてだったんですけど、第二幕で殺されそうになるフロレスタンの前に立ちふさがった時の叫びが圧巻でした。

一言で言うとどちかというと鋭い感じでよく聞こえてくる声かなと。

だからフィデリオのような意志の強い役には合ってるんでしょうね。

ただ第一幕では若干不安定な感じも否めなくて、この人の声って本当はどんな感じなんだろう、もっとすごくパコーン!と出るような気もするし‥

っていうモヤモヤ感。そしてそのモヤモヤ感が逆に緊張感になって、一生懸命聞いちゃいました笑。

なんていうのか‥すごく安定してる人ってそれはそれで安心して聞けるし、楽しめるからいいんですけど、

若干の不安定さを感じると、なんかもっともっといい声出るんじゃないかなと思って、注意深く聞いてしまい結果として惹かれるというか、そういう不思議な感覚を持ちました。

あとまたあとで別の時にも聞いてみたいという思いも。

2幕のピツァロの前に立ちふさがる時には、よしこれぞ!みたいなフィデリオらしい力強い声が出ていたので、この時のために前半の抑えた感じがあったのかもしれないとそんなことも思いました。

経歴を見ると、ローエングリンのエルザとかマクベス夫人とか結構重い役も歌っているみたいなので、そのうちトゥーランドットとかもやるのかなと、ちらりと思いました。

フロレスタン役・福井敬さん

フロレスタン役を演じたのは福井敬さん

今回ダブルキャストでもう一人が小原啓楼さんだったんですよね。

小原さんは以前ローエングリンで見てすごくよかったのでもう一度見たいと思いつつ、どっちにしよう‥と悩んだんですよね。

実は小原さんのフロレスタンもどんなだったか気になりますが

とはいえ福井さんはやはり素晴らしいの一言

フロレスタンって1幕では全然歌わないんですよね。

で、第二幕の冒頭のアリア、フィデリオはこのアリアがすごく良くて好きなんですけど

歌い出しの「神よ!」という一言、これがもう素晴らしいの一言でした。

おおっ!すごい、という感動。

たった一言で、こんなに感動させられたのは初めてかもしれない。

しかも一幕は全く出番がなくて、いきなりの「神よ!」でこの声。

どう歌ったらこんなに感動を呼ぶんだろう、と後からイントネーションとか抑揚とかを思い出そうとしたんですけど、それは無理でした。

とにかくこの出だしの一言で、やっぱり福井敬さんってすごい!と思ったのでした。

ピツァロとフェルナンド

ピツァロは数あるオペラの中でもかなり悪役だと思うのですが、

そんなピツァロを演じたのは大沼徹さんで、どうしてもこの方は私には悪者に見えないんですよね。

声質のせいなのかなんなのかわからないんですけど。

っていうか、あまりちゃんと配役を見てなくて、ピツァロは黒田博さんなのかと勝手に思ってました。(黒田さんが悪役顏というわけではありませんが‥笑)

で、ピツァロをみてあれ?黒田さんかなあなんか違う人みたいだけど‥と

そしたら大沼さんだったというわけなのでした。

大沼さんは一昨年だったかの愛の妙薬のベルコーレ役で見て以来です。

一方黒田博さんのドン・フェルナンドも存在感たっぷり。

確か黒田博さんは一昨年のあの不思議なフィデリオ、レオノーレがピツァロに刺されてしまうという、

あの時もドン・フェルナンド役で出ていたかなと思います。

昨年のウェルテルでもアルベール役でも見たかな。

今回のフィデリオはかなり日本の大御所ばかり出てますよね。やっぱり難しい演目なのかも。

ロッコとマルツェリーネ

ロッコ役は妻屋秀和さん。ロッコ役は黒田さん同様、昨年のフィデリオでも同じ役を演じていらっしゃいましたけど

前回はフロレスタンがステファン・グールドという巨体だったので、妻屋さんも大きい方なのに、小さく見えちゃったのを覚えてます。

今回のロッコの方が個人的には存在感があって好きでした。

またマルツェリーネを歌ったのは冨平安希子さん

この人は2018年の後宮からの逃走のブロンデ役で見て以来。

モーツァルトと今回のフィデリオではずいぶんタイプの違うオペラですよね。

どっちがあってるかというとモーツァルトの気もするけど、マルツェリーネのかわいい雰囲気が出てました。唯一このオペラで癒しの存在ですよね。

それにしてもフィデリオって第一幕はやっぱりすこし退屈‥。

でも第二幕が盛り上がるから結果おもしろい。そんな気がします。

二人で歌う歓喜の二重唱は耳に残ります。

なにはともあれ新国立劇場でまたオペラを見ることができたのが何よりでした。

フィデリオの見どころ・ベートーベンが作った唯一のオペラ

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です