テノールにも種類がある・軽いレッジェーロから重いヘルデンテノールまで

男性の高い声域をテノールといいます。

テノールはかつて存在していたカストラートほどは高くない声域です。

 

テノールは主役を歌うことが多く、貴族や王族、庶民、神話の中の人物など多くの役柄があり、

歌手の中でも花形的な存在といってもいいでしょう。

そのテノールの中でも声質によって種類が幾つかに分かれます。

また、声質に合う役柄というのもあります。

テノールの種類

 

カウンターテナー

 

テノールの種類の中でもっとも高い音域でその音域は女性のメゾソプラノと同じような声域です。

ファルセット(裏声)を使う歌い方で、男性ではなかなか歌える人が少ないです。

カウンターテナーはもともと教会音楽などを歌っていたという歴史があるので、オペラの演目で登場することは少ないですが、少ない分注目される役が多いと思いますね。

ヨハン・シュトラウスのこうもりのオルロフスキー役が有名で、

かつてヨッヘン・コヴァルスキーというカウンターテナーがこの役を当たり役にしていました。

最近ではぴったりはまるカウンターテナーがいないのか、この役はメゾソプラノの女性が担当していることが多いです。

高い声が出せる人は、どうしても背が低い人が多いので、コヴァルスキーのような男性的で高音が出せる歌手があまりいないのかもしれません。

 

もののけ姫を歌った米良美一さんもこの声域といっていいでしょうが、オペラというより宗教音楽の方のようですね。

カウンターテナーとカストラート

 

レッジェーロ

レッジェーロとは、軽快にとか軽やかで優美にという意味で楽譜を見てもこの文字が書いてあることがあります。

子犬のワルツなどがそうですね。

テノールの種類の中でも、もっとも軽く明るい声質になります。

そのため、悲劇的な内容のオペラよりどちらかというとオペラブッファと呼ばれる軽い喜劇的なオペラにレッジェーロはよく登場します。

ロッシーニ作曲のセビリアの理髪師に出てくるアルマヴィーア伯爵のような役が典型でしょう。

これは、協会で見かけた美しい女性(ロジーナ)を獲得するために、変装して家にもぐりこんでバレそうになるという、ふざけた面白い役柄で、

このような役には軽く澄んだレッジェーロがぴったりですね。

 

レッジェーロはコロコロと転がすように歌う、コロラトゥーラの技巧も求められることが多く、技術的にもなかなか大変です。

 

最近の歌手でいうとペルーの歌手ファン・ディエゴ・フローレスなどがそうですね。

超高音を難なく出して軽快なコロラトゥーラを歌う人です。

少し前だとロックウェル・ブレイクやフランシスコ・アライサの若い頃などもうそうでしょう。

アライサは王子役のイメージが長くありましたが、年齢とともに声が重くなり、その後重い役に移っていったようですが。

 

リリコ

リリコは叙情的なという意味で、テノールの種類の中でこのリリコというの最も一般的なテノールの声といっていいでしょう。

レッジェーロよりも叙情的な旋律を歌いますがそこまで強い声は求められません

リリコとレッジェールの間のリリコ・レッジェーロという声域をわけて呼ぶ場合もあります。

モーツァルトの魔笛のタミーノなどは中間のリリコ・レッジェーロといっていいかもしれません。

 

リリコは役柄でいうとヴェルディの椿姫の恋人役アルフレードや同じくヴェルディのリゴレットのマントヴァ公爵

ドニゼッティの愛の妙薬のネモリーノなどでしょう。

 

喜劇ではないけれど、重すぎない役といったところでもっとも役柄としては多いと思います。

明るい高音で、技巧を凝らした歌というよりも、ロマンティックで聴かせる役柄が多いですね。

 

歌手だと、かつての三代テノールのパヴァロッティや少し前だとアルフレード・クラウスなんかがそうでしょう。

二人ともハイCと呼ばれる上の高音やさらにハイDまで楽々と出せた歌手で喜劇にはほとんど出演していないです。

パバロッティはその後もう少し重い役もやるようになっていきますが、クラウスは亡くなるまで自分の声域にこだわり、美しいテノールの高音を保っていました。

かっこいい人でしたね。

 

リリコスピント

 

リリコスピントはリリコよりさらに叙情的な役柄で強靭な声も求められるテノールです。

テノールの種類の中でも悲劇的な役が多く、表現力が求められるのがリリコスピントです。

 

役柄だとヴェルディのアイーダのラダメスや、同じくヴェルディのトロヴァトーレのマンリーコ

プッチーニのトゥーランドットのカラフなどです。

カラフは誰も寝てはならぬのアリアがとても有名ですね。

 

歌手では、プラシド・ドミンゴやホセ・クーラなど。

少し前の歌手では、ベルゴンツィや、フランコ・コレッリなどがこのリリコ・スピントにあたるでしょう。

 

ドラマティコ

 

リリコスピントよりさらに重厚で、テノールの種類の中で最もドラマティックな声と強靭な喉が求められるのがドラマティコです。

日本人のような華奢な体型ではこのドラマティコは難しいテノールです。

 

高音でありながら、太く力強い声はドラマティックなオペラにぴったりで、感動を呼びますが、それだけ歌手の負担も大きいといわれ、

この領域に行くのは大変なことだと思います。

その分熱烈な支持も高いのもこのドラマティコテノールなんですね。

 

役柄の代表格はヴェルディのオテロでしょう。

オテロはヴェルディが74歳のときに作った渾身の作品で、

それまで以上に音楽と演出とストーリーが一体となっており、

最初から最後まで緊張感に満ちたドラマティックな作品になっています。

そのため従来のイタリアオペラよりも重厚な力強いテノールの声質が求められている役柄です。

 

2017年の新国立劇場オテロではタイトルロールをカルロ・ヴェントレというテノール歌手が歌ったようです。

残念ながら私はその公演にはいけませんでしたが、経歴を見ると、イタリアのヴェローナ野外音楽堂などでも歌っていて

おそらくかなりの力量がある歌手なのだと思います。

 

ドミンゴもこの役をやっていたのですが、リリコスピントかドラマティコかというのははっきりとした線引きがあるわけではなく、実際にはどちらもやっているという感じです。

ただ、セビリアの理髪師のアルマヴィーア伯爵のようなレッジェーロの歌手がドラマティコな役をやるということはまずありえないと思います。

 

ドラマティコの歌手であげられるのは、今は亡きマリオ・デル・モナコでしょう。

彼の声は黄金のトランペットと称され、オテロは彼の代名詞のような役でした。

見た目もいいですしね。

生涯でオテロ役を200回以上歌っていると言われています。

オペラというのはそもそも上演回数が少ないのに、すごい回数ですよね。

昔の録音は今ほど鮮明な音ではありませんがそれでも、ツヤツヤしたその声はさぞかし素晴らしかったことだろうなとわかります。

 

そのほかのドラマティコ歌手として、ジョン・ヴィッカーズなどもいましたが同じドラマティコでもちょっと違うタイプです。

マリオ・デル・モナコのような天才が出てしまうとそのイメージがしばらくあって、後に歌う人は大変だと思いますね。

 

ヘルデンテノール

 

ドラマティコの領域のなかでも特にワーグナーのオペラを歌う歌手は、とりわけ特別強靭な喉を求められ、ドラマティコとはわけてテノールの種類の中でも特別にヘルデンテノールと呼ばれています。

ヘルデンは英雄という意味なので、英雄的なテノールということですね。

役柄はワーグナーのオペラのリングのジークフリートトリスタンとイゾルデのトリスタンなどです。

 

ヘルデンテノール歌手で、現在圧倒的な存在感を表すのは

ヨナス・カウフマンとクラウスとフロリアン・フォークトでしょう。

世界中で引っ張りだこのようですね。

 

ちなみにカウフマンはアンジェラ・ゲオルギューというソプラノ歌手に請われて、

椿姫の相手役としてアルフレードをやって当たったのがきっかけと言われます。

 

少し前だとルネ・コロやペーター・ホフマン。

さらに前だとヴィントガッセンという歌手がヘルデンテノール歌手として有名ですね。

ヘルデンテノールと歴代の歌手達

 

 

テノール歌手の特徴と、変遷

 

テノールの特徴としては主役や恋人役が多いということがあります。

そのため、演技力とか見た目も重要な要素となるんですね。

テノール歌手の特徴は高い声なので、どうしても体系的には比較的背が低い男性テノールが多くなってしまうようです。

 

そんな中で

声が素晴らしく、背も高くて、見た目もよく、演技がうまい

という風に、全部揃うことはとても難しいことで

だからこそ、それが揃っている歌手がいるとたちまち人気がでるわけです。

ただ、オペラの場合は、もし

  • 見た目がいいけど歌がいまいちの人と
  • 見た目はいまいちだけど歌が非常に素晴らしい

 

がいたら、どちらを選ぶかというと

断然後者だと思います。

オペラの場合、歌がうまいと見た目は気にならなくなるものだとおもうんですよね。

少なくとも私はそうです。

 

また、歌手の声質は年齢と共に変遷していきます。

その変遷は、大抵太くなることが多く、若い頃はリリコだったけどドラマティコに移行していったということはよくあることです。

 

特殊な例としては、ヘルデンテノールで有名なルネ・コロはもともとオペレッタばかり歌っていたのですから驚きの変遷ですね。

同じくヘルデンテノールとして人気があったペーターホフマンはもともとポップス歌手からの転向だったので、こちらも珍しいパターンです。

歌手の経歴を見て、どんな役をやってきたのかの変遷を見るとだいたいどんな声質なのかというのは想像できますがこの二人については特におもしろいですね。

 

また、オペラの場合の役柄は主に声質で歌手を決めていくので、

親子の設定でも実年齢は子供の方が年上で、お父さんが年下

女性の場合も娘役の方が母より年上というのはよくあることです。

先日、グルベローヴァが主役を演じるランメルモールのルチアを見ましたが、70歳になる彼女が清純な乙女の役をやっていました。

彼女の当たり役でもありますしね。私も含め観客は大喜びでした。

美しい声を聞いていると年齢なんか全く気にならなくなるんですよね。

それくらい声の力はすごいものだと思います。

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