ビゼーの真珠採り・カルメンとは違うオペラ

ビゼー25歳の作品

今回はビゼーの真珠採りというオペラについて特徴や見どころを書いてみたいと思います。

ビゼーというとカルメンが代名詞の様に有名ですが、有名になったのはビゼーが亡くなった後の事なので、ビゼーは日の目を見ないまま逝ってしまった作曲家と言うイメージを私は持っていました。

でも実はビゼーは19歳の時にローマ大賞という栄誉に輝いていた新進の作曲家だったんですよね。

またピアニストとしての実力はリストも認めるほどだったようですから、必ずしも不遇っていうイメージではないのかもしれない‥と最近思いました。

さて、そんなビゼーがパリのリリック劇場の依頼で作ったのがこの「真珠採り」というオペラです。

初演は1863年。ビゼーが25歳の時です。

ちなみに代表作カルメンの初演は1875年でビゼーが37歳の時のオペラ。ビゼーはその年に亡くなってしまっています。

真珠採りはセイロン島(現在のスリランカ)が舞台の異国情緒があるオペラで、初演はまずまずだったようなのですが、一方で批判もあったようで結果としては初演から18公演で一旦終了。この数字は爆発的な人気からは程遠かったようです。

またこのオペラにはいくつか改定版があって特に最後の終わり方はズルガが殺されたり殺されなかったりなど公演により違いがあります。

真珠採り作品の印象・カルメンとは違う

真珠採りを見てまず思ったのはカルメンとはずいぶん違うなという印象です。

カルメンの音楽って独特だと(私は)思うんですけど、真珠採りはどちらかというと、マイアベーアとかヴェルディとかそっちの路線なのかなという印象でした。

レイラが巫女で、恋愛禁止っていうあたりの設定や、レイラの登場のシーンを見るとちょっとベッリーニのノルマも思わせるかもしれません。

ノルマの初演は1831年だから影響があったのかなかったのかは残念ながらわかりませんが‥。

最後の第3幕の後半になるとちょっとカルメンっぽい音楽もあるんですけどね。

全体にはカルメンより壮大な曲っていうイメージなのはちょっと意外というか、そんな気がしました。

というのもカルメンより10年以上も若い時に作ったオペラなのです。普通は後半になるほど壮大になると思ったので。

当時ってフランスではオペラ座がまだ何と言ってもトップに君臨している時期だと思います。

パリオペラ座にはマイアベーアとかヴェルディ、ドニゼッティといったフランスから見たら外国の作曲家達がグランドオペラと言われる豪華なオペラを作っていたわけです。

もしかして当時の人気路線に合わせてビゼーも作曲したっていうところがあったんだろうか。これは私の勝手な想像ですが‥。

明らかにカルメンとはちょっと路線が違うというか‥。

まあ10年以上時が経てば作風も変わるといえばそうなのかもしれません。

とにかく真珠採りを聞いてそんな印象を持ちました。

ミシェル・カレの台本なのに

とはいえ、このオペラにはすごく有名なテノールのアリアがあります。

ナディールが歌う「耳に残るは君の歌声」と言う曲。

それにズルガとナディールの男性二人が歌う二重唱もすごくいい曲。

それなのにどうしてあまり当時人気が出なかったのかちょっと不思議な気がするんですよね。

たしかにそれ以外のアリアはあまりぱっとしないといえばそうなんですけど‥。

ただオペラを見てみて台本がちょっと唐突というか、無理があるのかなという印象は少ししました。

巫女になったら恋愛禁止と散々念を押されて「大丈夫です!」といったのに速攻で誓いを破るし(笑)、破った途端銃声がして見つかるし、

嫉妬に狂って死刑だ!といったズルガが後悔するのはわかるけど、だからと言って部落に放火をするのはえ?!と思うし

逆に自分が皆に殺されてしまうのも、急展開すぎるというか‥

文章であらすじを読むとそうでもないんですけど、オペラで見るとあれれ?って感じがちょっと否めないかなと思いました。

でも台本はミシェル・カレとウージェーヌ・コルモンっていう人達で、ウージェーヌ・コルモンはフランス生まれでオペラ座のマネージャーまでやっていた人らしいです。

何よりミシェル・カレといえば、ジュールバルビエとのコンビで数々の有名オペラを残してるんですよね。

などがそうです。

それとも演出によるんだろうか‥。

なんかおもしろいのにもったいないというか。そんな気がする内容なのです。

真珠採り簡単あらすじ

場所はセイロン島。

新しい頭領になったズルガの元に、長い旅から戻ったナディールがやってきます。

二人はかつて同じ尼僧を好きになって争った過去があるのですが、過去を忘れて永遠の友情を誓い合います。

そこへ、仮面をつけた巫女が皆の前にやってきて、生涯顔を見せず恋愛もせず皆のために祈り続けることを誓いますが、実はその巫女は二人が好きになったレイラでした。

ナディールは仮面の下の女性がレイラだと気づき、またレイラもナディールへの思いを断ち切れず、二人は誓いを破ってしまいます。

それがばれたものの、ズルガは友情から一旦は二人を救おうとしますが、巫女がレイラだとわかった途端、嫉妬のために死刑を宣告します。

しかし怒りに任せて死刑を宣告したことを後悔するズルガ。そんなズルガのもとにレイラがやってきて、ナディールの命乞いをしたので、ズルガは嫉妬でまたもや拒絶してしまいます。

ところがレイラの首飾りからかつて自分の命を助けてくれたのがレイラであったことに気づきあせるズルガ。

まさに二人の処刑が行われようとする時、ズルガは部落が火事になっていると叫びます。二人を助けるために放火したのです。

人々はいなくなり、二人は助かりますが、ズルガは裏切り者になり、処刑されてしまいます。(またはされない場合もあります)

真珠採り見どころ

このオペラで一番お見どころというか聞きたいところは私の場合二箇所で、一つはナディールが歌う「耳に残るは君の歌声」というアリア、もう一つは第一幕のナディールとズルガの二重唱

ナディールのアリアはとても有名なので題は知らなくても聞いたことがあるという人が意外に多いのではないかと思います。しみじみとするとても良い曲です。

二重唱については徐々に高揚していく美しさがなんとも言えず、フルートとの掛け合いもきれいです。

男性の二重唱で一番何が聞きたいかと聞かれたらこれを入れるかもっていうくらいいいですね。

ビゼーのオペラで「美しきパースの娘」の中のアリアで日本では「小さな木の実」で知られている曲があるのですが、ナディールのアリアはカルメンの中のアリアより、こちらに雰囲気が似ているかなと思います。

この二つのオペラは作られた時期も近いんですよね。

真珠採りはレイラとナディールが恋人同士で主役に見えますが、このオペラで一番重要なのはズルガじゃないかなと思います。ズルガの苦悩の表現はこのオペラの鍵かと。

なのでズルガがどんな演技と歌になるのかは見どころだと思います。

頭領で情があるので、かっこいい声のバリトンだといいなと個人的には思います。

またこのオペラはエキゾチックな踊りが特徴で見どころ。踊りが入るところが最初と途中にあるのも特徴的。当時のパリオペラ座の様式が2幕や3幕にはいるのとはやはり少し違っているのかなと思いました。

それがリリック劇場だったからかどうかはわからないのですが。

踊りは入れようと思えば何箇所かに入りそうなので、どこに踊りが入るか、多いか少ないかというのも公演によって違うと思うので見どころだと思います。

レイラは顔を隠してでてくるので、どんなヴェールまたは仮面を被っているのか、どんな衣装なのかも見どころですね。

3幕2場の処刑の場での人々の荒っぽい様子は一風変わった音楽と踊りで、ここはもっとも後のカルメンを思わせる音楽だと思います。なので見どころ聞きどころ。

アリアは他にもいくつもありますけど、そんなに特徴的ではないかなと。

ただ、ヴェルディやマイアベーアのようにすごく難しい技術のアリアというより、聞かせる曲っていう感じなので、その点は安心して聞けると個人的には思いました。

いずれにしても二つのアリアのためだけでも、みてみると良いオペラではないかと思います。

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