プッチーニのデビュー作品
今回はプッチーニのデビュー作品といえる「妖精ヴィッリ」似ついてちょっと書いてみます。プッチーニがコンクールに出した作品だったんですよね。
- 作曲:プッチーニ
- 1884年
- 場所:ダル・ヴェルメ劇場(ミラノ)
妖精ヴィッリというオペラの初演の時プッチーニは24歳でした。
この初演の2年前、22歳の時にプッチーニがソンジョーニ社の一幕ものオペラのコンクールに出した作品だったんですよね。
実はコンクールでは落選してしまったのですが、リコルディという会社の目に止まり、次のエドガールという本格オペラを作ることになったのです。
つまり妖精ヴィッリというオペラはプッチーニのデビュー作品のような存在なわけです。
ちなみにソンジョーニ社の一幕ものオペラで有名になったのはマスカーニのカヴァレリア・ルスチカーナもありますね。
また、妖精ヴィッリが初演できたのはアルリーゴ・ボーイトのおかげだとか。ボーイトといえばヴェルディの晩年の作品(ファルスタッフとかオテロ)の台本を書いた当時とても有名な人なんですよね。
さて誰々の初期の作品って聞くと、良いところもあるけど熟年の時期の作品と比べるとやっぱり若い、まだまだな感じがするとかそういう場合もあるんじゃないかと思うのです。
そんなつもりで妖精ヴィッリを見ると全然違っていて‥。うわあ、すでにプッチーニだ!という感じなのです。
若い時に作った初期の作品という感じは全くなくてプッチーニって最初からすごかったのねと思ったのでした。
実は私はプッチーニってなんていうか音楽をなんども盛り上げすぎてお涙頂戴的なところがあるから、やっぱりヴェルディの方がいいなと、ずっとそんな風に思っていました。
でも聞けば聞くほどプッチーニってやっぱり天才だわと思っちゃうのです。
当たり前じゃないかと言われそうですけど‥(笑)
ジゼルと同じ題材
さて妖精ヴィッリっていう題名だけ聞くとなんとなくかわいらしいイメージがわくんじゃないかと思います。少なくとも私はそうでした。
でもこれって結構怖いお話なんですよね。
バレエにジゼルっていう有名な演目がありますが、妖精ヴィッリは同じ題材なのです。
妖精といっても女性を裏切った男を踊り続けさせて殺しちゃうっていう呪いの妖精。
姿は妖精だけど中身は悪霊なのです。
時代的にはバレエの方が先でジゼルの初演は1841年で場所はフランス。そちらの作曲はアドルフ・アダンっていう人。
同じ題材だけどオペラよりバレエの方がかなり有名ですよね。
もともとはドイツに伝わる伝説で、ドイツにはこういった悪霊とか幽霊とかそういう伝説が多いのかなという印象です。
ハイネっていうドイツの有名な作家がいるんですけど彼の作品にもヴィッリのお話がでてきます。
ヴィッリは妖精で、バレエの方の代題になっている「ジゼル」っていうのは裏切られた女性の名前です。オペラの方だと同じ女性は「アンナ」ですね。
ジゼルは初演当時からかなり人気があったらしいので、その影響でプッチーニもこの同じ題材を取り上げたのか、その辺はよく知らないのですが、いずれにしてもおもしろいストーリーですよね。
ただしジゼルとちょっと違うのは、
ジゼルでは最後に踊り死にそうになるところをジゼルが「助けてあげて」とヴィッリの女王に頼むので助かるのですが、オペラの方ではそれはなく死んじゃうんですよね。
そこは違うところ。
ちなみに妖精ヴィッリの台本はフェルディナンド・フォンターナという人が書いていてそのあとのプッチーニの「エドガール」も同じくこの人が台本を書いています。
そのあとはイッリカとジャコーザに変わっていくんですよね。
プッチーニってオペラは台本が重要なんだなあと教えてくれる作曲家じゃないかと私は勝手に思っていて
そんなわけでこの妖精ヴィッリはどんな風に台本が進んでいくのかなというのもかなり興味があるところなのです。
妖精ヴィッリ簡単あらすじ見どころ
<簡単あらすじ>
中世のドイツのある村のこと。
アンナとロベルトの婚約を祝って村人たちは踊ったり歌ったり楽しそう。
そんな中ですがロベルトは亡くなった叔母の遺産相続のためにしばしマインツへ旅立たなくてはなりません。
別れを惜しむアンナと自分の愛を信じて待っていてと言うロベルト。
ところがロベルトはマインツで妖婦に夢中になってアンナのことなど忘れてしまうのです。そして悲しみにくれながらアンナは死んでしまいます。(ここは語り手が説明)
やがてロベルトはアンナを捨てたことを後悔しつつ村に戻ってくるのですが、待ち構えている悪霊ヴィッリたちに歩け歩けと駆り立てられます。
その時アンナが出てくるので、一瞬ロベルトは再会を喜ぶのですが、それもつかの間、そのアンナは亡霊で自分は失意のうちに死んだのだと伝えるのです。
ヴィッリたちはロベルトを踊り続けさせロベルトは死んでしまいます。
<見どころ>
2幕で1時間ちょっとなので、短くて見やすいオペラです。
でも音楽はプッチーニなので決して軽くないです。
第1幕の村人たちがしく歌ったり踊ったりするシーンの音楽はとても聞きやすく素敵な音楽で私はとても好きなところです。
バレエが合いそうだなと思う曲でもあります。
また片田舎の物語だけど合唱がなかなかに豪華(すぎる?)なところはプッチーニの次作エドガールでも感じたところです。
プッチーニの音楽ってやっぱり小さな村の普通のお話よりも、壮大なストーリーとか情熱的なストーリーが合うんじゃないかなあと思います。
あとこのオペラの特徴は1幕と2幕の間に語りが入ること。
語りではロベルトが別の女性に夢中になってしまい、アンナが死んでしまった時の経過を伝えるのですが、そのあとの間奏曲がまたなんとも言えずいいのです。
これから起きるヴィッリたちの呪いの復讐を予感させるザワザワした感じや躍動感はなんとも言えずうまいなあと。
そして暗雲立ち込める第2幕へ‥。
妖精ヴィッリの最大の見どころのひとつはやはりヴィッリたちがどんないでたちで出てきてどんな風にロベルトを踊らせて死に至らしめるのかという演出じゃないかと私は思います。
バレエと違いオペラではロベルトは死んでしまいますから、ヴィッリの怖さも注目したいところですね。
あと2幕であの頃に戻りたいと歌うロベルトのアリアも聞きやすくて情熱的でとてもいい曲です。
テノールの見せどころじゃないかと思うし、もっと有名になってもいいアリアじゃないかなと個人的には思います。なので2幕のロベルトのアリアは見どころ聞きどころ。
バレエが合いそうだなあと思う音楽は前半も後半も出てくるのですが、
ジゼルがバレエだからこちらにはバレエは入らないのかなという気がするし、もしかしたらバレエが入る公演もあるかも。そんな演出部分も見どころかな。
また2幕で亡霊になったアンナがどんな風な様相で出てくるのかも見どころで、アンナの恨みの歌もなかなかよいので聞きどころ。
というわけで良い曲が満載なのでリコルディ社が注目したわけねと思う若きプッチーニのオペラです。
それにしても人はお化けとか亡霊とか、そういうお話になぜか惹かれる気がします。ゾクゾク感がいいのかなんなのか、ちょっと自分でも不思議です。
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