ラ・ボエームはジャコモ・プッチーニが作曲したオペラです。
世界中のオペラハウスで上演されるとても人気のあるオペラです。今回はそんなラ・ボエームについて人気の秘密や私が思う見どころについて書いてみたいと思います。
成立と初演
初演と場所
- 作曲:ジャコモ・プッチーニ
- 台本:ジュゼッペ・ジャコーザ、ルイージ・イッリカ
- 初演:1896年
- 場所:テアトロレージョ劇場(トリノ)
プッチーニのオペラの中でも人気のあるオペラで、中でもラ・ボエームは世界中で最も人気のある魅力的なオペラの一つと言っていいのではないでしょうか。
ラ・ボエームの人気
アメリカのメトロポリタン歌劇場の何年かの上演回数を見ても、ラ・ボエームは1,2位を争う人気ぶりです。
作曲したプッチーニがすごいと思うのは、人気の3作品を続けて作曲しているにもかかわらず
すべて趣の異なるタイプのオペラなんですよね。
- トスカは時代設定も古く政治も絡み、登場人物がすべて死んでしまう迫力のあるあらすじ、
- 蝶々夫人は舞台が日本の長崎で、現地妻の蝶々夫人がピンカートンを待ち続ける悲恋のあらすじ。
- そして、ラ・ボエームは、貧しいけど夢を追う若者たち、時代背景を絡めた甘く切ないあらすじ。
というように。
プッチーニのオペラは、全体にドラマティックで情熱的というイメージをもっているのですが、
最も人気があるラ・ボエームは、ちょっとほんわかした切なくロマンティックなオペラだと思います。
トスカやトゥーランドットとはちょっと趣の異なるオペラなのですが、
どちらも人気があるんですよね。
中でもラ・ボエームというオペラは4幕あるのですが、各幕が30分弱と短いし、内容もわかりやすいです。
休憩を入れても全部で2時間少しで終わるというコンパクトさ。
オペラって休憩を入れると3時間はあたりまえで、長いのは4時間5時間というのもある中で、
音楽が良くてストーリーもおもしろくて、場面も程よく変化して時間も短めって意外に少ないかも。つまりとても見やすいと思うんですよね。
初演場所
ラ・ボエームの初演場所はイタリアのトリノのテアトロレージョという劇場です。
トリノはイタリアの中でもミラノ同様北の方に位置する工業都市でミラノの西にあります。
レージョ劇場というと、日本ではあまりなじみがない名前ではないかと思うのですが
実は歴史は古く、1740年にできています。
ミラノのスカラ座やフェニーチェ劇場ができるまでは、最高峰のオペラハウスと言っていいほど由緒のある劇場でした。
そうだったのねとちょっと私もびっくりでした。
その後、スカラ座ができて陰に薄れていた時期もありましたが、トスカニーニが音楽監督に就任した時代は、再び老舗オペラハウスとしての威厳が復活したと言います。
そこは、さすがにトスカニーニですよね。
オペラハウスといえば、遠くアメリカまでもちょいちょいトスカニーニの名前が登場しますが
ラ・ボエームの初演の場所であるレージョ劇場は、まさにそのトスカニーニが音楽監督をしていた時期でした。
ラ・ボエーム初演の演奏も、おそらく素晴らしかったんじゃないかなと。
以前私の中では、フェニーチェ歌劇場の方が格上だと思っていたので、
レオンカヴァッロのラ・ボエーム(レオン・カヴァッロという人もラ・ボエームというオペラを作っています)の初演場所がフェニーチェ歌劇場で、
プッチーニのラ・ボエームの初演場所が、レージョ劇場だったということは、
プッチーニの人気が、当時はまだまだ無かったからかなと思っていたのですが、
劇場の格としては決してそういうわけでもなかったんですね。
ラ・ボエーム特徴
台本
プッチーニの中でもとりわけ人気のある
ですが、この3つの作品に共通している特徴は台本を
ジュゼッペ・ジャコーザとルイージ・イッリカの二人が書いているいうことです。
ラ・ボエームについては、もともとはレオンカヴァッロが台本担当を申し出ていたのですが、
プッチーニはそれを断って、ジャコーザとイッリカに頼んでいるのです。
結果としてこのゴールデントリオが生み出したオペラはどれも後世に残る作品ばかりとなるので
やはり台本というのは大事なんだなとつくづく思います。
もっともレオンカヴァッロも道化師という素晴らしいオペラを残していますから
相性の問題もあったのではないでしょうか。
レオンカヴァッロのラ・ボエーム
プッチーニは、レオンカヴァッロからの台本の申し出を断ったため
レオンカヴァッロは仕方なく自分で、ラ・ボエームの作曲をするのですが、
断っておきながら、プッチーニも同じ題材で同じ題名のラ・ボエームを作曲し
しかも、レオンカヴァッロよりも先に上演しました。
そのためプッチーニと、レオンカヴァッロの関係は悪くなったと言います。
当然ですよね。
これを見るだけで、プッチーニの性格的な特徴が垣間見得るような気がしますが…。
もともとはこの二人は、マノン・レスコーというオペラを作る際に
- プッチーニが作曲
- レオンカヴァッロが台本担当の一人
という関係で一緒に仕事をしていた関係だったわけですし…。
とはいえ、人間関係はさておき、
こういう作品を残してくれたことには後世の私たちにとっては感謝かなあ。
あらすじと上映時間
簡単あらすじ
19世紀中頃実際にパリに多くいた、芸術家を目指し定職に就かない若者達の明るく切ない話のあらすじです。
主役は、詩人のロドルフォとお針子のミミ。
それに、画家や音楽家・哲学家を目指す友人達が加わり、
彼らが集う屋根裏部屋での会話や、カルチェラタンのカフェでの悪ふざけ。
そしてミミの病を思って別れる二人。
それでも忘れられず、ロドルフォとみんなの元に戻ってくるものの
ミミは病で死んでしまうという切ないあらすじです。
二人の恋愛を軸に、全く性格と考え方の異なるムゼッタとマルチェロの恋もあり、
また、お金で彼女達を射止めようとする男性達を絡めながら進んでいくあらすじです。
上映時間
- 第一幕:約30分
- 第二幕:約20分
- 第三幕:約25分
- 第四幕:約25分
合計で正味2時間弱ですから、短めのオペラですね。
短いけれどそれぞれの人物の個性が立っていてはっきりとわかるので、それも見やすい理由ではないかと思います。
見どころ
涙なしには見られないオペラかもしれません。
第一幕のミミとロドルフォの出会いのシーンと二人のアリアはとても有名。
初々しく感じるのは、プッチーニのロマンティックな音楽もさることながら、
宝石のような歌詞にもあると私は思います。
例えば、第一幕の二人の出会いのシーンでのアリアで、ロドルフォは
- 貧しいけど、愛の言葉はほしいまま、心は王様‥
- 僕の(心の)宝石箱から宝石を奪ったのは、美しい二つの瞳
- 代わりに僕の心には希望が入ってきた‥
こんな感じの言葉で歌うのです。
またミミのアリアも
- 私の好きなものは愛を語る魔力、それは詩。
- 一人で暮らしているけど、雪解けの季節の太陽は私のために。
- 四月の(太陽の)最初の口づけは私のもの
という感じ。美しいなあと。まさに詩の様なアリアなのです。
アリアというと時代がもう少し古いアリアは歌詞はそれほどたいした内容を歌っていないものが多く、
愛していますと繰り返し歌うだけという様なアリアがたくさんあるんですよね。
そんな中で、ラ・ボエームというオペラは、アリアの歌詞が美しいので
この点もこのオペラの聞きどころ、見どころの一つだと私は思います。
また、気の強いムゼッタがラストで見せる優しさなど、基本的に悪人が出てこないので、
切なく悲しいラストですが、全体としてほんわかしたオペラです。
そのくせ、第二幕のカフェでのやりとりは、ちょっとドキドキするおもしろさもあるので飽きません。
全体を通して、貧しいながらも明るさを失わない若者達の心はとても響いてくるものがあります。
また第三幕のミミの体を心配するシーンや、
第四幕のミミが亡くなってしまうシーンについては、思わず涙が誘われてしまうでしょう。
そんなところもこのオペラの、人気の理由で見どころだと思います。
美しく叙情的な音楽とともに、セリフや歌詞の美しさを楽しみたいオペラで、それが見どころではないでしょうか。
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