今回は日本人に人気のプッチーニのオペラ「トスカ」についてです。
プッチーニはイタリアを代表するオペラの作曲家で
ヴェルディの 後を引き継ぐ作曲家とも言われていますが、
ヴェルディとは似ているようで似ていない、そんな作曲家ではないかと私は思います。
トスカ・オペラの成立
- 初演:1900年
- 場所:コンスタンツィ劇場(現在のローマ歌劇場)
- 原語:イタリア語
プッチーニの代表作はトスカの他にラ・ボエームや蝶々夫人、トゥーランドットなどがありますが、
トゥーランドットの初演の指揮はトスカニーニという人が行っています。
トスカニーニという人はは1900年代の大指揮者なのですが、映像や録音も多く残っているんですね。
私などはオペラも時代がプッチーニまでくると、比較的最近の作曲家というイメージがあります。
初演のコンスタンツィ劇場は現在ローマ歌劇場と名前を変えていますが、
2018年秋には日本で引っ越し公演がありました。
演目は、ヴェルディの椿姫とプッチーニのマノン・レスコーです。
ついでに言うと、コンスタンツィ劇場はプッチーニと同世代でライバルでもあった
マスカーニという作曲家のカヴァレリア・ルスチカーナの初演場所でもありますね。
トスカ・あらすじと上演時間
それではトスカの簡単あらすじと上演時間についてです。
トスカの簡単あらすじ
プッチーニのトスカは超悲劇的なストーリーです。
主要人物は3人。その簡単あらすじを書いてみます。
トスカとカヴァラドッシは恋人同士。
警視総監のスカルピアはトスカを我が者にしようと企む超絶悪い人物。
(数あるオペラの悪役の中でもかなりな悪役です。でもバリトンがやってみたい役ベスト3に入るらしいです。)
カヴァラドッシは政治犯をかくまった罪でスカルピアに捕らえられ処刑されることになります。
彼の命乞いをするトスカに、スカルピアは俺のものになるならあいつを助けてやる、と持ちかけます。(悪いやつです)
トスカは了解したふりをして、スカルピアをナイフで突き刺し殺してしまいます。
一方スカルピアはもともとカヴァラドッシを助けるつもりなどなく、
処刑は予定通りわれてしまい、絶望したトスカも自殺してしまいます。
主要人物の3人が全て死んでしまうという劇的なあらすじですね。
プッチーニのオペラの中でももっとも悲劇的なオペラじゃないかと思います、でもこれが人気なんですよねー。
上演時間
内容が濃いわりには、それほど長くはありません。(オペラにしてはですが)
とはいえ、このオペラがもっと長かったら観るのもとても疲れると思います‥。
全3幕
- 1幕 教会の場・・・45分
- 2幕 スカルピアの部屋・・・40分
- 3幕 白の屋上・処刑の場・・・25分
休憩を含めないで、1時間50分
2回の休憩を入れると2時間40分程でしょう。
1幕から3幕まで息もつかせないような緊迫が続くオペラです。
トスカの特徴と魅力
プッチーニのトスカが作曲された頃の1800年代後半から1900年初頭にかけては
ヴェリズモオペラと言われる庶民の事件や殺人などを描いたシリアスなオペラが流行しました。
マスカーニのカヴァレリア・ルスチカーナはその代表作ですが、
プッチーニも多分にその影響は受けていたと思います。
プッチーニ自身もトスカから約20年後に外套というヴェリズモオペラを書いていますしね。
でもトスカはヴェリズモオペラではありませんし、
トスカの時代設定も1800年と古い時代で、舞台も宮殿や城などで豪華です。
地の台詞はなく、全て音楽で表現していく形式で、
アイーダのヴェルディに見られるグランドオペラのような形式を受け継いでいるかのように少し見えるんですね。
ところが、劇的で、ドラマティックな音楽の進行をみていると、まるでヴェリズモオペラのようにも思えます。
コロラトゥーラのような技巧は使わず、
歌と共に身体全体を使って、感情表現をするところなどはヴェリズモっぽいんですよね。
だからトスカを歌うソプラノはとても大変だと思います。
ちなみにプッチーニの蝶々夫人も同様に大変な役ですね。
トスカや蝶々夫人は無理して歌うと喉を壊すとも言われるソプラノの役ですが、
そうでしょうね、だよねと実際思ってしまいます。
まるでかなり重くて大変な役と言われるワーグナーのブリュンヒルデ役なみに大変じゃないかと思います。
また、プッチーニのオペラを称してお涙ちょうだいのオペラと言う場合がありますが、
その理由の一つはストーリーにもあると思います。
オペラはやはり歌手の声がもっとも目立ちますから、歌手ありきアリアありきというところがあるので、
ストーリーはどちらかというと二の次なんですね。
モーツァルトのオペラを見ればよくわかると思いますが、
ストーリーは比較的単純で、中にはばかばかしいような内容も多くあります。
ところが、プッチーニのオペラのストーリーはとにかく緻密。
上に簡単なあらすじを書きましたが、実際には伏線ストーリーが二重三重になっていて、
まるで映画か、2時間サスペンスドラマのように細部までねられたストーリーなのです。
運命のいたずらとか、ハラハラする勘違いが随所に入っているんですね。
個人的にはオペラをそこまで映画っぽくすることはないんじゃないかなと思ったりもしますが、
とにかく引き込まれるストーリーなので、人気なのだと思います。
ちなみにですがプッチーニのトスカの前作はラ・ボエームというオペラですが、こちらは全く異なるオペラで
優しいセンチメンタルなオペラです。
プッチーニが好きと聞くと、どっちのタイプが好きなのかなとつい思ってしまいますね。
プッチーニのオペラを見るならぜひ両方を見てみるといいんじゃないかと思います。
トスカの聴きどころ
一幕はトスカがやきもちを妬いたりするところなど、ちょっとラ・ボエームを思わせる
ほんわかした感じもありますが、
全体には緊迫した状況が続くオペラです。
プッチーニのオペラ・トスカには有名なアリアが二つあります。
一つはトスカが歌う「歌に生き、恋に生き」のアリア。
第2幕で暴君スカルピアに、恋人の命と引き換えに自分の女になるよう迫られ、
どうしようもない辛い心情を歌うアリアです。
もう一つはカヴァラドッシが歌う「星も光りぬ」のアリアです。
処刑前に恋人トスカを思って歌う悲しく心に響くしたアリアです。
両方とも単独でガラコンサートなどでよく取り上げられるアリアですね。
なおトスカの「歌に生き、恋に生き」は、マリア・カラスの映像が残っていますが
トスカは彼女の得意としたレパートリーで、ドラマティックなマリア・カラスの声質はまさに
トスカにぴったりです。
共演もカヴァラドッシがカルロ・ベルゴンツィ
スカルピアが ティート・ゴッビと抜群の組み合わせで、ティート・ゴッビの憎らしい感じが
ものすごくよく出ているんですよね。
こんな映像が残っていると、どうしても比較されてしまうので、後に歌う人はちょっと大変かもしれない、
と思っちゃいますね。
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