最初に見るオペラを間違えると嫌いになる
今回はオペラを見るとしたら最初に見るべきオペラは何?
についてです。
最初に見るオペラを間違えてしまうとオペラが退屈になってしまうかもしれません。
実際のところつまらないオペラって結構あるんですけど、見方を変えるとつまら無いオペラもガラッと違って見えてくることがあります。
はじめて見るオペラとして単純に見やすいものについては「はじめてのオペラの選び方」の方にいくつかあげておきましたが、今回の視点はそれとは少し違います。
オペラの歴史は長いので、時代や国で作風がまったく違っていてこれもオペラ?と思うようなオペラもたくさん。
なので、それぞれの時代の特徴やオペラの位置づけがわかってくると、
一見つまらないオペラも「この時代のオペラってこうだよね、うんうん」とすんなり入ってきたりします。
そして退屈さもそれなりに楽しめるようになる気がしています。
見方によると「その時代のオペラの代表」っていう感じかもしれません。ただし例によって私の妄想とか個人的な思いが入っているので、そこはご了承ください(笑)
そんなこんななので、はじめてのオペラの選び方とはちがっていて、最初に見るには難しいと感じるものもあえて入れました。その作品もオペラの性質を知った上で見ればきっと大丈夫!かな(笑)と思ったからです。
バロックオペラからヘンデルのジュリオ・チェーザレ(シーザー)
まず最初に見るべきオペラに上げるのはバロックのジャンルからヘンデルのジュリアス・シーザーです。
ヘンデルの作品は他にリナルドやセルセなどありますが、正直言ってどれでもいいです。作りが似てるので。
最初に言っておくとヘンデルのオペラは退屈かもしれない(たぶん退屈)けど見るべきオペラというか、見ておいた方が良いオペラです。
バロックオペラはオペラの中では古い部類で、全盛期は18世紀。
いわゆる派手な金ピカオペラの時代(こんな言い方したら怒られるかも笑)。ヘンデルのジュリオ・チェーザレは18世紀初頭のオペラですね。
この時代のオペラはオペラセリアって呼ばれて特徴としてはカストラートというスター歌手に熱狂した時代なのです。歌手ありきのオペラですね。
当時は山ほどオペラが作られたはずなのに、現在上演されているのはヘンデルのものがほとんど。他のはどこに行っちゃったの?というくらい無いんですよね。
バロックオペラの特徴は私流に言えば
- 高音の歌手がやたら多い
- オーケストラにチェンバロがある。
- カウンターテナーがいる(カストラートは現在はいないです)
- 男役なのか女役なのかわかりにくい
- アリア(独唱)がやたら長い
- 前半は退屈だけど最後の方で盛り上がる
- 王とか皇帝がよく出てきて徳を見せる
など。
バロックオペラは本来はイタリアのもので、ナポリあたりが中心でした。
でもヘンデルは実はドイツ人でしかもロンドンで活躍した人です。
なので本当なら「変だよね、違うんじゃない?」となるところなのですが、他のバロックオペラは現在はほとんど無いので、仕方なくというか(結局ヘンデルの曲がやっぱりいい!っていうことだと思っています)バロックオペラの代表にしました。
この矛盾はほんと不思議(笑)イタリアの人たちはそれでいいんかな?と思うくらい‥。
後のオペラに比べるとジュリオ・チェーザレは前半はなんとなくちんたらしている感があって、正直言って退屈感が否めない、というかはっきり言って退屈!。
でも「ヘンデルの音楽はやっぱり美しい!」それにつきるかな。
映画「カストラート」の中でも「ヘンデルの歌が歌いたい!」って言ってるシーンがあったような‥。
だから他のバロックオペラに比べておそらくダントツによかったに違いないって思うんですよね。
もっともバロックオペラはそのうち飽きられて行くんですけど‥。でもたとえ退屈でも最初に最低一つは見ておくべきオペラだと思うし、退屈は退屈なりに他のと比較ができるんですよね。
モーツァルトの「魔笛」超絶技巧も聞ける
そして次に上げるのはモーツァルトの魔笛です。
やっぱりモーツァルトは最低一つは見るべきかなと。
時代的にはバロックより少し後で、魔笛は18世紀の終わり1791年です。
モーツァルトの時代はまだまだイタリアオペラが主流だった時代。
モーツァルトの母国語はドイツ語なのに、彼が作ったオペラのほとんどはイタリア語のオペラ。
そんな中でモーツァルトがドイツ語で作ったのはたった二つ。
その二つのオペラのうちの一つがこの魔笛(もう一つは後宮からの逃走)。亡くなる年の作品でもあります。
その後はドイツ語のオペラもどんどんできていくんですけど、モーツァルトはちょうどドイツ語オペラとイタリア語オペラの狭間を生きた人と言ってもいいんじゃないかと思います。
というわけでモーツァルトはやっぱり欠かせないから最初に見るべきオペラに入れました。
魔笛を選んだ理由は、やっぱり曲が良いことと
夜の女王役のソプラノの超絶技巧が味わえるオペラだということがあります。
これ人間の声?こんなに高い声が出せるの!という超高音に加え超難しいテクニックはまさにオペラならでは。他の音楽では聞けない醍醐味なので、最初に見るべきオペラにしました。
ロッシーニのセビリアの理髪師
次に最初に見るべきオペラにあげたいのがロッシーニのセビリアの理髪師です。
19世紀初頭(1816年)のオペラ。モーツァルトより少し後です。
オペラ好き以外にはあまり知られていないと思うのですが
ロッシーニってオペラの世界では大御所的な存在なんですよね。作品も多いし。
バロックオペラにみんなが飽きてくると楽しいオペラが好まれるようになりました。それがオペラブッファです。
ブッファの代表としてやっぱりセビリアの理髪師は見るべきかなと。
やっぱり楽しいオペラっていいですよねえ。
このオペラの特徴としては
- 低音歌手が主要な役にいる(バロックではいなかった)
- 話が楽しい(バロックではまじめ系)
- 序曲が特に有名
なんとわずか2週間で作り上げたという奇才ロッシーニのオペラは、イタリアらしい肩のこらないオペラ。
主役のロジーナがソプラノかと思いきやメゾやメゾソプラノが歌うと言うのもちょっとおもしろいところです。
イタリア人が誇るヴェルディは絶対はずせない!ということで「椿姫」
オペラを見るなら絶対にはずせないのがヴェルディの作品。
オペラが好きになると必ず一度はヴェルディにはまるといわれます。
かくいう私もそうでした。
どんなオペラかというと話が劇的、音楽が重厚、泣ける。
ヴェルディって悲劇がほとんどなんですよね。
スカラ座のブーイングでもかきましたけど、歌手の歌が下手だと「ここをどこだと思ってる!スカラ座だぞ」と天井桟敷から言われちゃうっていうのを聞くと
「きついなあ、そこまで言う?でもそうだよねえ、イタリアはやっぱオペラすごい、ヴェルディもいたしなあ」って私なんかは思っちゃうくらいです。
椿姫は1853年のオペラ、時代はロッシーニより後、19世紀の真ん中ですね。
個人的にはヴェルディの中で一押しはトロヴァトーレなんですけど椿姫の方が有名なのでこちらにしておきました。
ヴェリズモオペラから道化師
ここからまたオペラがガラッと変わります。
それまでは王様、英雄、王女、公爵などなどこの登場人物を見るだけでもオペラって一般庶民とは関係ない世界の話なんだなと思うんですけど
ヴェリズモオペラになると普通の家のゴタゴタとか、恨み、妬み、殺人などがオペラになってくるのです。それがヴェリズモオペラって呼ばれるオペラ。
時代は19世の終わり1892年です。ヴェルディより後ですね。
浮気した妻に怒った夫が妻とその愛人を殺すという、現代もありそうなドロドロ劇。
これがまたおもしろいんです。オペラ歌手が白熱の演技と歌で演じるともうグッとくること間違いなし。
ちなみにヴェリズモ代表と言われるのは二つあって一つはこの道化師。
もう一つは「カヴァレリア・ルスチカーナ」というオペラですが、
道化師の方は「衣装をつけろ」という劇的なアリアがあって有名なのでこちらがおすすめ。時間も短いので見やすいです。
オペラ歌手にすごく演技力が求められる作品じゃないかと思います。
オペレッタの代表から天国と地獄
オペラとオペレッタって何が違うの?っていうのはいまだに私もいまいちはっきり言葉にはできないのですが、感覚ではなんとなくわかってきた気がしてます。
オペレッタはのちのミュージカルの元になったと言って良いと思いますが、そんなオペレッタの元祖がこちらの天国と地獄。
一見ふざけた内容なのですが、実は当時の風刺がたっぷり。
初演は1858年。ナポレオン3世の第二帝政時代で言論や芝居などの統制が厳しかった時代でもあります。
作曲したオッフェンバックは自分で立ち上げた劇場でこのオペレッタを大ヒットさせたのです。ただし、批判もかなり多かったとか。風刺たっぷりですからね。
天国と地獄の人気はその後ウィーンのオペレッタへと繋がっていくのです。
なのでオペレッタの中でやはりこの作品を最初に見るべきかなと思います。
フレンチカンカンがあるし、話がおもしろいので俄然見やすいと言うこともおすすめする理由。楽しいと言う感覚は19世紀も21世紀も同じだと思うんですよね。
世界中で愛されるオペラ・ビゼーのカルメン
実はビゼーはオペラ史を見ていく中では割と存在感が薄い人です。
というのもビゼーは若くして亡くなってしまったし、生前はカルメンはヒットしていなかったオペラなんですよね。
でも現在では世界中で最も上演回数が多いオペラの一つと言われるほど人気のオペラです。
時代は1875年でパリの初演。
すでにパリのグランドオペラもほぼ終盤の時代に生まれたこのオペラですが、独自路線で人気は続き世界的に有名なオペラになっています。
ということで、オペラの歴史的な位置づけというより、とても有名なオペラで、人気があるのはやはり音楽とストーリーが良いからだと思うので
最初に見るべきオペラにあげてみました。
以上は私の勝手な選択です。
本当はドイツと言えばワーグナーを外すな!とか
ウェーバーはドイツオペラの金字塔だぞ!入れるでしょ、とか
もっと古いモンテヴェルディを入れるべきなんじゃないの?とか
グランドオペラを忘れてる!とか
アメリカは?ロシアものは?チェコだってあるよね。ブリテンを外すな!とか
いろいろ意見言われそうですけどそれだけオペラってたくさんあるってことだと思います。だからおもしろいんですけどね。
ということで、オペラを見る時の最初の作品として少しでも参考になれば幸いです。
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